事業用太陽光のFIT/FIP「支援重点化」とは? 対象となる4類型(案)
2027年4月から、工場や店舗の敷地などに太陽光パネルを地上置きする事業用太陽光発電は、原則としてFIT/FIP制度の新規申請(支援)ができなくなります。
では、どこに設置すれば支援が続くのか。2026年9月30日、経済産業省の審議会(総合資源エネルギー調査会 再生可能エネルギー主力電源化小委員会)で、その整理案が示されました。
■ FIT/FIPとは FIT(固定価格買取制度)は、再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定めた価格で買い取るよう電力会社に義務づけた制度で、2012年に始まりました。FIP(フィードインプレミアム)は2022年4月に導入された仕組みで、発電事業者が卸電力市場などで電気を売った際に、売電価格へ一定のプレミアム(補助額)を上乗せします。事業用太陽光(10kW以上)の支援期間はいずれも20年間で、費用の一部は「再エネ賦課金」として電気料金に上乗せされ、電気の利用者が負担しています。 |
施行は2027年4月1日の予定で、支援価格や認定基準は2027年1月ごろにかけて詰められます。2027年度の設備投資計画を固めるいまのうちに、自社の計画が支援の対象になりうるかを確かめておきましょう。本記事では「どこに置けば支援が続くのか」を企業目線で整理します。

1. 2027年4月、事業用太陽光の何が変わるのか
FIT制度を機に太陽光発電が急速に広がる一方、安全面や景観・環境への影響をめぐる地域の懸念が高まり、地域と共生した再エネ導入を求める条例を制定する自治体も増えています。
こうした中で政府は2025年12月、「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」を決定し、地上設置の事業用太陽光への支援を廃止も含めて見直すとともに、屋根設置など地域共生が図られた導入への支援に重点化する方向を打ち出しました。
これを受けて2026年2月、調達価格等算定委員会が「事業用太陽光(地上設置)は2027年度以降、FIT/FIPの新規支援の対象外」とする意見をまとめ、同年3月末には関係する省令・告示が公布されています。
ここで押さえておきたいのは次の2点です。
対象外になるのは2027年度以降の新規認定です。すでに認定を受けた案件の支援はそのまま続き、2026年度の入札で落札した案件も例外として扱われます
屋根設置は、早期の投資回収を可能にする「初期投資支援スキーム」や入札の免除などにより、すでに支援が重点化されています

2. 線引きの「3つのものさし」
事務局は8月の会合で、重点化する類型を選ぶための「一定の考え方」を整理し、今回、関係省庁や業界団体などから挙がった10の候補類型に当てはめました。
ものさしは次の3つです。
ものさし | 確認すること |
①今後の導入 | 導入ポテンシャルやエネルギー基本計画での位置づけから見て、再エネ拡大に重要な類型か |
②地域との共生 | 次のいずれかを満たすか。 a:新たな土地開発を伴わず、従来の土地利用も大きく変わらない b:自治体や国が事業期間を通じて関与・監督し、問題があれば改善を促せる |
③制度の特性 | 書類などの客観的な証拠で対象を線引きでき、余った電気を売電する類型か |
①では屋根の伸びしろが際立ちます。推計では、事業用の屋根は導入ポテンシャル137.2GWに対し導入量は約6.1GWにとどまる一方、事業用の地上設置はポテンシャル20〜107GWに対し、すでに約54.6GWが導入されています。
企業にとって特に重要なのは、次の2点です。
■ 「自社の敷地だから大丈夫」は通用しない
工場・商業施設の敷地はすでに整備された土地ですが、従来の土地利用が大きく変わらないことを制度上担保できず、自治体の関与もないため、②を満たさないと整理されました。工業団地・商業施設には統一的な定義がなく、③の線引きも難しいとされています。
■ 売電しない自家消費は、そもそもFIT/FIPの対象外
FIT/FIPは売電した電気の量に応じて支援する仕組みです。余剰売電を伴わない純粋な自家消費やオンサイトPPAは、環境省の地域脱炭素の取組など、他の支援策と役割分担して後押しするとされています。
同じ考え方から、地域新電力への供給や災害時の電力供給といった「地域への便益」も、それだけでは対象外とされました。便益は地域の理解を得る要素にはなっても、影響を抑えるものでも、事業期間を通じた監督を担保するものでもないからです。「地域に役立つか」ではなく、「影響が小さいか」「監督が続くか」「書類で線引きできるか」。ここが今回の線引きの核心です。
3. 10類型の判定結果 ― 同じ敷地でも“置き方”で明暗が分かれる
表1:10の候補類型の判定(2026年9月30日の事務局案)
No. | 類型 | 判定 | 主な理由 |
1 | 国・自治体所有の土地 | 対象 | 貸付・地上権設定や自ら実施する場合は、事業期間を通じて監督できる(売却した土地は対象外) |
2 | 温対法の促進区域 | 対象 | 市町村から地域脱炭素化促進事業計画の認定を受けた事業に限る |
3 | ソーラーカーポート | 対象 | 駐車場の上部空間を使い、新たな土地開発を伴わない |
4 | インフラ空間(空港・道路・鉄道・港湾等) | 対象 | インフラ機能を維持することが制度上の前提 |
5 | 地域新電力・自治体等への供給、基金の活用 | 対象外 | 地域への便益があっても、影響の抑制や監督の担保にならない |
6 | 災害時の電力供給 | 対象外 | 同上 |
7 | 営農型太陽光 | 継続検討 | 農林水産省の制度改正の施行を優先し、2027年度に改めて検討 |
8 | 工業団地・商業施設等の敷地内 | 対象外 | 土地利用の転換を担保できず、統一的な定義もない |
9 | ゴルフ場跡地・スキー場跡地等の未利用地 | 対象外 | 伐採・整地等の可能性があり、公的な証憑もない |
10 | 耕作放棄地・荒廃農地 | 対象外 | 同上 |

企業に関係するポイントは3つです。
ポイント1:ソーラーカーポートは “要件” に注目
ソーラーカーポートは現行制度では屋根設置の区分に含まれないため、重点化の対象になるかどうかで2027年度以降の扱いが変わります。資料が示した確認方法の案は次のとおりです。
■ 建築基準法上の検査済証の写し
■ 駐車場の上部空間を活用し、太陽光パネルのすべてがカーポート上にあることを示す写真・図面
環境省の提案では、「一体型または搭載型で、建築基準法に基づく建築物であること」「工場、店舗等の施設に付随する駐車場に設置されるもの」とされています。工場や店舗の駐車場は典型例ですが、月極駐車場やコインパーキングのような単独の駐車場の新設を誘発しないかという論点も残っており、最終的な要件は詳細設計で決まります。
ポイント2:インフラ空間は「どこまで含むか」がこれから
国土交通省の提案では、空港・道路・鉄道に加え、臨港地区の倉庫等の敷地や上下水道施設の敷地なども挙がっています。除外が明記されたのは都市公園のみですが、確認には根拠法令に基づく使用許可などの書類が想定されており、範囲は今後の詳細設計次第です。建物の屋根に設置するものは、引き続き屋根設置の区分です。
ポイント3:促進区域・公有地は “自治体との連携” が前提
促進区域は、市町村から地域脱炭素化促進事業計画の認定を受けた事業に限られます。国・自治体の土地も、貸付や地上権設定による事業が対象で、売却を受けた土地は対象外です。発電事業を手がける企業や、自治体と組んで再エネ事業を検討する企業にとっては、有力な選択肢になります。
■ 営農型は「対象外」ではなく「継続検討」 営農を続けながら農地の上部で発電する営農型太陽光は、農業との両立が図られない事例が増えていることから、農林水産省が「望ましい営農型太陽光発電」(遮光率30%未満、最低地上高3m以上など)を明確にする制度改正を準備中です。FIT/FIPでの扱いは、施行後の運用状況を見ながら2027年度に改めて検討されます。 |
4. まだ決まっていないこと ― 価格・期間・認定基準の行方
10月以降は、次の論点が議論されます。
再エネ主力電源化小委員会:設備の区分や認定基準、説明会の扱い、地域活用要件、廃棄等費用積立制度の適用
調達価格等算定委員会:FIT/FIPの別、入札制の適用、支援価格・期間や初期投資支援スキームの適用、解体等積立基準額
資料は、検討にあたって屋根設置の現行の取扱いを参考にすることが有益としています。“ひな形”になりうる現行ルールは次のとおりです。
表2:事業用屋根設置太陽光の現行の取扱い
項目 | 屋根設置 | (参考)地上設置などその他の事業用 |
固有の認定基準 | 建築物の検査済証、建物の表題登記、全パネルの屋根設置、電気事業法上の届出 | 共通の基準のみ |
説明会 | 努力義務 | 説明会等の事前周知が認定基準(50kW以上は説明会) |
入札 | 適用なし | 250kW以上は入札(2026年度) |
支援価格 | 初期投資支援スキーム:最初の5年間19円/kWh、6〜20年目8.3円/kWh(2026・2027年度) | 入札対象外は9.9円または9.6円/kWh(2026年度) |
出典:資源エネルギー庁「買取価格・期間等」
ただし、初期投資支援スキームは、屋根の設置者となる建物所有者は財務基盤や与信が小さい傾向にあることなどを理由に講じられた措置です。カーポートやインフラ空間に同じ扱いが適用されるかは未定で、具体案は2027年2〜3月ごろのパブリックコメントで示される見込みです。
コラム 導入から廃棄まで ― “出口”まで含めて設備を選ぶ 太陽光パネルは、いずれ廃棄物になります。FIT/FIPの認定を受けた10kW以上の太陽光には「廃棄等費用積立制度」があり、調達・交付期間の終了前10年間、原則として売電収入から源泉徴収的に積み立てます。2022年7月から順次始まっていますが、積立金の多寡にかかわらず、廃棄処理の最終的な責任は排出者にあります(資源エネルギー庁「廃棄等費用積立制度について」)。新しい類型への適用も今後の論点です。 さらに2026年6月には「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」が公布されました。多量の事業用太陽電池を廃棄しようとする者には、国の判断基準に基づくリサイクルの取組と廃棄実施計画の事前届出が義務づけられ、判断基準に基づく指導・助言は事業用太陽電池を廃棄しようとするすべての者が対象です。施行は2027年秋〜冬ごろの予定で、「多量」の要件は今後政令で決まります。 背景には、2030年代後半以降にパネルの排出量が年間最大50万トン程度に増える見通しと、埋立処分(2,000円/kW程度〜)とリサイクル(8,000〜12,000円/kW)の費用差があります。屋根やカーポートの太陽光は、撤去の時期が建物の改修や建替えとも重なります。導入の段階から、撤去・リサイクルの方法と費用、委託先まで計画に織り込んでおくことが、将来の負担とリスクを小さくします。 |
■ CYCLETANKのサーキュラーエコノミー支援 CYCLETANKでは、廃棄物の適正処理とサーキュラーエコノミーの視点から、太陽光パネルを含む設備の撤去・リサイクルまで見据えた計画づくりをご支援しています。「将来のパネル廃棄にどう備えればよいか」「新法で何が求められるのか」といったご相談は、お気軽にお問い合わせください。 |
5. 企業の環境部門が今やるべきこと
■ チェックリスト
検討中の太陽光案件を「屋根」「カーポート」「敷地内の地上置き」に仕分ける
敷地内の地上置きをFIT/FIP前提で計画している場合は、今年度中に認定を取得できるかを確認する。難しければ、屋根・カーポートへの切り替えや、自家消費・PPAへの転換を検討する(申請の受付期限は資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」で確認)
駐車場のソーラーカーポート化は、建築確認、構造(積雪・風荷重)、車両の動線などの技術検討を、支援価格が決まる前から進めておく
屋根の耐荷重・防水・築年数を確認し、屋根設置の可能性を改めて評価する
撤去・リサイクルの方法と費用を、導入時の事業計画に織り込む
対応が遅れると、敷地内の地上置き案件は2027年度以降に認定を申請してもFIT/FIPの支援を受けられず、想定していた売電収入が見込めなくなります。また、支援価格の決定を待ってから技術検討を始めると着手が遅れ、投資計画の後ろ倒しにつながりかねません。
■ 自治体の方へ
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おわりに
2027年度から、事業用太陽光のFIT/FIP支援は「どこに、どう置くか」で決まります。屋根とカーポートは支援が続く方向、工場や店舗の敷地内への地上置きは対象外の方向です。
支援価格や認定基準はこれからですが、設置場所の仕分けや技術検討は今から始められます。制度の確定を待たずに動くことが、2027年度以降の選択肢を広げます。
■ CYCLETANKの脱炭素計画策定支援 CYCLETANKでは、企業の脱炭素計画の策定支援として、太陽光の設置場所の検討(屋根・カーポート・自家消費型)から、PPAなどを組み合わせた再エネ調達の方針づくりまで、環境部門の皆さまに伴走しています。「自社の太陽光計画は2027年度以降も支援を受けられるのか」「屋根とカーポートのどちらを優先すべきか」といったご相談をお待ちしています。 |
参考資料



