脱炭素社会に向けた日本の新たな一手 – GX推進法と資源有効利用促進法の改正について
- 坂本裕尚
- 3月20日
- 読了時間: 4分
更新日:3月22日
今回は、日本の脱炭素社会実現に向けた重要な動きとして、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)と「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)の改正についてご紹介します。

背景と法律の概要
日本は、2050年のカーボンニュートラル実現と経済成長の両立、いわゆるGX(グリーントランスフォーメーション)を目指し、具体的な施策を進めています。
その中心となるのが、GX推進法に基づく「成長志向型カーボンプライシング構想」の具体化です。
今回の改正では、以下の4つの主要な取り組みが行われます。
排出量取引制度の法定化
資源循環強化のための制度の新設
化石燃料賦課金の徴収に係る措置の具体化
GX分野への財政支援の整備
排出量取引制度(GX推進法)の詳細
まず、排出量取引制度について詳しく見ていきましょう。
参加義務:二酸化炭素の直接排出量が一定規模(10万トン)以上の事業者は、この制度への参加が義務付けられます。
排出枠の割当て:事業者の状況や業種特性を考慮し、排出枠は無償で割り当てられます。製造拠点の国外移転リスクやGX関連の研究開発の実施状況なども考慮される点が特徴です。
排出枠取引市場:排出枠取引の円滑化と適正な価格形成のため、GX推進機構が排出枠取引市場を運営します。金融機関や商社など、制度対象者以外の事業者も参加可能です。
価格安定化措置:事業者の投資判断を助け、国民経済への過度な影響を防ぐため、排出枠の価格に上下限が設定されます。価格が高騰した際には、事業者が一定価格を支払うことで償却とみなす措置も導入されます。
移行計画の策定:対象事業者には、中長期の排出削減目標とその達成のための計画策定・提出が求められます。
特定事業者負担金:排出量取引制度を基礎として、2033年度からは特定事業者負担金の徴収も開始されます。
資源循環の強化(資源有効利用促進法・GX推進法)
次に、資源循環を強化するための取り組みです。
再生資源の利用義務化:脱炭素化を促進するため、再生材の利用義務を課す製品を特定し、製造事業者等に再生材の利用計画提出と定期報告を義務付けます。GX推進機構は、計画作成に関する助言を実施します。
環境配慮設計の促進:資源の有効利用と脱炭素化のため、優れた環境配慮設計(解体・分別しやすい設計、長寿命化設計など)の認定制度を創設。認定製品にはその旨の表示や、リサイクル設備投資への金融支援などの特例措置が適用されます。
GXに必要な原材料等の再資源化の促進:高い回収目標等を掲げて認定を受けたメーカー等に対し、廃棄物処理法の特例を適用し、回収・再資源化を促進します。
CE(サーキュラーエコノミー)コマースの促進:シェアリングなどのCEコマース事業者の類型を新たに位置づけ、資源の有効利用等の観点から満たすべき基準を設定します。
その他の改正点
化石燃料賦課金の徴収:2028年度より開始する化石燃料賦課金の執行に必要な支払期限・滞納処分・国内で使用しない燃料への減免等の技術的事項を整備します。
財政支援:脱炭素成長型経済構造移行債の発行収入により、GX分野の物資に係る税額控除に伴う一般会計の減収補填を行います。
まとめ
今回のGX推進法と資源有効利用促進法の改正は、日本の脱炭素社会実現に向けた大きな一歩です。排出量取引制度の導入や資源循環の強化など、具体的な施策が盛り込まれており、今後の動向が注目されます。
私たち一人ひとりも、これらの取り組みを理解し、持続可能な社会の実現に向けて意識を高めていくことが大切と考えます。
🔷環境省:「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」の閣議決定について(2025.02.25)
🔷脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び 資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案の概要