PET製容器のラベルレス化拡大へ 〜 資源有効利用促進法の見直しと循環経済の加速 〜
- 坂本裕尚
- 1 日前
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現在、資源有効利用促進法に基づき、PET製容器の識別表示制度の見直しと、ラベルレス製品の拡大に向けた議論が進められています。(PET製容器のラベルレス化拡大へ)
2026年4月24日に開催された経済産業省の産業構造審議会 容器包装リサイクルワーキンググループにおいて、PETボトルのラベルレス拡大に向けた省令改正の方向性が示されました。
経済産業省 第4回 産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 容器包装リサイクルワーキンググループ |
これまで箱売りの場合に限定されていたラベルレス化ですが、この新たな方針では、他の法令で定められた表示事項がラベルに不要な場合に限り、ボトル本体への刻印のみで識別表示を完結させる(ラベルのPETマーク表示を省略する)ことが可能となる見込みです。
これにより、プラスチック使用量の大幅な削減と、リサイクル効率の向上が期待されており、日本のサーキュラーエコノミー(循環経済)をさらに加速させる重要な一手となります。

1. 資源有効利用促進法と識別表示の現状と歴史
1.1 識別表示制度の法的根拠
「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」第24条第1項に基づき、製造事業者等には指定表示製品への分別回収のための識別表示が義務付けられています。
対象となるのは、紙製容器、プラスチック製容器包装、PET製容器、アルミニウム製の缶、鋼製の缶などです。
PETボトルに対しては、1993年よりPETマークの表示が求められるようになりました。導入から30年以上が経過した現在、消費者の間では分別回収の意識が深く定着しています。
1.2 従来のPETボトルにおける表示基準
現行の省令では、確実な分別回収とリサイクルを実現するため、以下の2箇所への表示が求められています。
容器の底部または側部 1箇所以上の「刻印」 これは、自治体等が回収・選別する際に識別を容易にするためです
容器の側部 1箇所以上の「印刷」または「ラベルの貼付」 これは、消費者がPETマークを認識し、適切な分別排出(リサイクル行動)を行えるように促すためです
2. 識別表示を取り巻く環境の変化と他法令との関係
2.1 社会的要請と技術革新
容器包装の識別表示をめぐる状況は、近年大きく変化しています。
効果的なリデュース(発生抑制)を通じた資源循環の加速という社会的要請の高まりに加え、飲料容器の小型化や機能性向上といった技術開発が進んでいます。
こうした変化への対応として、すでに2020年4月より、箱売り(ケース販売)の場合に限り、外箱にPETマークと役割名を表示することで、個々のボトルのラベルレスが認められる緩和措置が取られてきました。
2.2 他法令(食品表示法・計量法)との関係
ラベルレス化をさらに単品販売へ拡大推進する上で課題となるのが、食品表示法や計量法など、資源法以外の法定表示との整合性です。
食品表示法 名称、原材料名、栄養成分等の表示を義務付けています この点について消費者庁は、ペットボトル飲料でプラスチック使用量削減などの環境負荷低減を目的とする場合、ふた(キャップ)のみを表示可能面積として差し支えないとの見解をQ&Aで示しています
計量法 密封をした特定商品の内容量(ml等)の表記を、見やすい箇所に行うことを要求しています
これにより、表示事項が少ない特定の商品においては、キャップ等への表示を活用することで、物理的に「ラベルレス」が可能な環境が整いつつあります。
3. PET製容器のラベルレス化拡大に向けた省令改正と実証データ
3.1 法令改正の方向性
経済産業省は、上記のような環境の変化を踏まえ、ラベルにおいて他法令の規定による表示が付されない場合に限り、ラベルへのPETマーク表示を省略可能とする省令改正を提案しています。
これは、ボトル本体の「刻印」表示のみであっても、消費者が適切にPETマークを識別し、これまで通りの分別行動が可能であると判断されたためです。
3.2 消費者意識調査が示す高い受容性
ラベルレス化によって消費者のリサイクル行動が阻害されないかを確認するため、15〜79歳の男女を対象とした実地調査(CLT調査)が実施されました。その結果、ラベルレスボトルの極めて高い受容性が確認されています。
① リサイクルマークの認識率(刻印のみの場合)
液色によって視認性が異なる可能性を考慮し、2タイプのサンプルで調査が行われました。
液色が黒い場合(コーヒー等/A群) 90.7%の利用者がリサイクルマークを認識できました
液色が透明な場合(水等/B群) 92.3%の利用者がリサイクルマークを認識できました
② ラベルレス化後のリサイクル行動への意向
「ラベルレスになっても、資源として今まで通り分別排出できる・多分できる」と回答した割合は、液色が黒い場合で99.7%、透明な場合で99.0%に達しました。
この結果は、ラベルのPETマーク表示を省略しても、消費者の分別意識や行動に悪影響を与えないことを強く裏付けています。
4. 業界からの要望と自動販売機展開への期待
4.1 家庭外回収におけるリサイクル効率の課題
全国清涼飲料連合会などの業界団体は、自動販売機でのラベルレス製品の単品販売を可能にするための規制緩和を強く要望してきました。
その背景には、家庭外で回収されるPETボトル(年間約39万トン)の多くが、ラベルが付いたまま回収されているという現状があります。
これはリサイクル工程においてラベル剥離の手間を生み、リサイクル効率を低下させる要因となっています。自動販売機からの排出は、この家庭外排出の約3分の1を占めており、ここでの直接的な対応が極めて有効とされています。
4.2 見込まれる削減効果
全国に約200万台あるとされる自動販売機でラベルレス製品を展開した場合、以下のような莫大な削減効果が推計されています。
対象範囲 | プラスチック削減量(年) | CO2削減量(年) |
水のみ | 約350t | 約2,100t |
全飲料の約半数 | 約1,700t | 約10,000t |
4.3 主な社会的意義
自動販売機での単品販売におけるラベルレス化が実現することで、以下の社会的意義がもたらされます。
リサイクル効率の向上 ラベル剥離工程が不要になり、よりスムーズな水平リサイクルが可能になります
品質の向上 再生材の品質改善と、資源循環の高度化に寄与します
GX(グリーントランスフォーメーション)の推進 プラスチック使用量およびCO2排出量を直接的に削減します
消費者の利便性向上 消費者が排出時にラベルを剥がす手間を省くことができます
5. 結論と今後の見通し
PETボトルは、出荷本数が増加傾向にある一方で、有価で取引されるなど資源としての価値が非常に高い重要な再生資源です。
今回の識別表示制度の見直しは、これまでの30年間にわたる分別意識の定着を前提としつつ、近年の技術革新や環境意識の高まりといった社会状況の変化に対応した、極めて合理的なアップデートと言えます。
この省令改正が実現すれば、現在のECサイト等での箱売りに加え、自動販売機を通じた単品販売においてもラベルレス化が一気に進むことになります。
事業者側における環境負荷低減の取り組みと、消費者の利便性向上がシームレスにつながることで、日本のサーキュラーエコノミーはさらなる前進を見せることが期待されます。



