G7最低のエネルギー自給率15.3%!日本の再エネ主力電源化に立ちはだかる「壁」と「道筋」
- 坂本裕尚
- 17 時間前
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今回は、2025年11月12日に開催された経済産業省の総合エネルギー調査会での議論を基に、日本のエネルギー政策の大きな転換点について、深く掘り下げていきたいと思います。
🔷経済産業省
総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(2025.11.12)
資源エネルギー庁の公式資料や太陽光発電協会(JPEA)の指針を見ると、このテーマが単なる環境問題ではなく、日本の経済、安全保障、そして私たちの暮らしの根幹に関わる非常に重要なプロジェクトであることがわかります。

本記事で、再エネの主力電源化がなぜ急務なのか、そしてニュースで頻繁に見る「地域トラブル」という最大の課題に、国と業界がどう向き合おうとしているのか、その全体像を掴んでいきましょう。
1. 日本の再エネの弱点:なぜ再エネ導入は「まったなし」なのか?
まず、根本的なところからみていきましょう。
なぜ日本はこれほどまでに再生可能エネルギー(再エネ)の導入を急いでいるのでしょうか?
それを理解するためにまず、日本のエネルギー構造の脆弱性をみていきましょう。
🚨 日本のエネルギー自給率:G7で最低
この数字は、改めて見てもかなり衝撃的ですよね。
2023年度の速報値で、日本のエネルギー自給率はたったの15.2%
これはG7諸国の中で最低水準であり、OECD38カ国中37位に位置しています
私たちは、一次エネルギーの約8割、電力の約7割を、海外からの輸入化石燃料に頼りっきりなのです
下の表を見ていただくと、日本の立ち位置がよくわかります。
順位 | 国 | 一次エネルギー自給率 | 主なエネルギー源の内訳 |
1 位 | ノルウェー | 805.7% | 再エネ等、水力、天然ガス、原油 |
5 位 | アメリカ | 113.2% | 天然ガス、原油、石炭、再エネ等 |
14 位 | イギリス | 64.8% | 天然ガス、再エネ等、原子力、原油 |
37 位 | 日本 | 15.3% | 石炭、原油、天然ガス、再エネ等 |
💸 年間24兆円の国富流出という代償
さらに深刻なのは、地政学リスクと、経済的な代償です。
例えば、原油は9割以上を中東に依存しています。もしあそこの情勢が不安定になれば、日本のエネルギー安全保障に直結するわけです。
そして、この化石燃料の輸入のために、年間で24兆円もの国富が海外に流出しているという衝撃的な事実があります。これは、国の税収の約3分の1に相当する規模です。
もしこの24兆円が国内のエネルギー投資に回っていたら、どれだけの新しい産業や雇用が生まれたか。この脆弱性を克服するための答えこそが、再生可能エネルギーの主力電源化というわけですね。
2. 主力電源化の真意:「量」から「質」へ
では、この「主力電源化」という言葉が何を意味するのか。単に太陽光パネルをたくさん設置すればいいという単純な話ではありません。
🎯 2040年度の野心的な目標
まず、量の目標を確認しておきましょう。
2040年度の電源構成見通しでは、再エネの合計を現状の約22.9% から4〜5割程度まで引き上げるとしています。特に太陽光は、現状の9.8%から23〜29%程度への倍増を目指す、非常に野心的な計画です。
項目 | 2023 年度 (速報値) | 2040 年度 (見通し) |
エネルギー自給率 | 15.2% | 3~4 割程度 |
電源構成:再エネ合計 | 22.9% | 4~5 割程度 |
(内訳) 太陽光 | 9.8% | 23~29%程度 |
(内訳) 火力 | 68.6% | 3~4 割程度 |
💡 「1人前の電源」への進化
ですが、主力電源化で本当に問われているのはその「質」の部分です。
一言でいうなら、再エネが「1人前の電源」になること。
これは、これまでFIT制度(国のお小遣い)に支えられてきた状態から卒業し、以下の二つの責任を果たすことです。
経済的自立:国民負担に頼らず、事業として自立すること
市場統合と供給責任:電力市場の需要と供給のバランス(価格シグナル)を見て、価格が高い時に多く発電するなど、能動的に振る舞いを調整する能力を持つこと
🚀 FIP制度への劇的な転換と優遇策
この自立化への鍵となるのが、FIP(フィードインプレミアム)制度への転換です。
FIPでは、事業者は自分で電力を市場で売り、その市場価格に国が補助額(プレミアム)を上乗せする仕組みです。収入が市場価格に連動するため、事業者は需給バランスに貢献する工夫(例:蓄電池に貯めて夕方に売る)をするインセンティブが働くのです。
この移行は今、急加速しています。2025年3月末時点で、FIP認定量は容量で約3,795MWに達し、前の年から2.2倍になっています。
政府は、FIP移行を促すために、非常に「巧みな制度設計」を行っています。
措置の分類 | 具体的な優遇/促進策 | 目的/効果 |
出力制御順の見直し | 2026年度または2027年度に、電力が余った際の発電停止の順番を FIT電源→FIP電源 の順とする。 | FIP電源の方が発電機会を確保しやすくなり、ビジネス的に有利になる。 |
バランシングコストの増額 | FIP移行に伴う需給調整の費用を補助する額を、2025年度に+1.00円/kWhと増額する。 | FIP移行のコスト負担を軽減し、電力市場の価格が高い時間帯へ供給を移す「供給シフト」を円滑化。 |
国が「雨とムチ」を使い分けて、FIPへの移行を促しているわけですね。
さらに、業界団体である太陽光発電協会(JPEA)も、太陽光発電に占めるFIPの比率を、2024年3月時点の0.8%から2030年までに25%超にまで高めるという野心的な目標を掲げ、発電事業者、需要家、金融機関の「行動変容」が不可欠だと宣言しています。
3. 最大の課題:「地域との共生」と多角的な規律強化
ここまでの話は政策や制度の大きな転換点でしたが、主力電源化の最大の壁となっているのは、私たちに身近な「地域との共生」です。
残念ながら、管理不足で雑草だらけになったパネルや、盛土が崩落した設備の写真が経産省の資料にも載っており、一部の不適切な事業者のせいで、太陽光発電そのものへの社会的な信頼が揺らいでいるのが現実です。

国と業界は、この問題が業界の存続にかかわるという強い危機感を持って、対策に乗り出しています。
🛡️ 関係省庁が連携した「法律の厳格化」
関係省庁は連携し、「土地造成や電気設備の安全性確保、自然環境・景観の保全、適正な土地利用の確保」といった、様々な公益の調整を行うための規律を強化しています。
省庁 | 対象法令等 | 主な対策内容(規律強化) |
農林水産省 | 森林法 | 林地開発許可条件の違反者に対し、罰則を新設し、命令違反者の公表を可能にする(2026年4月施行予定)。 |
経済産業省 | 電気事業法 | 土砂流出や地盤崩壊の防止措置を、FIT/FIP認定事業だけでなく全ての太陽光発電事業に義務付ける。 |
環境省 | 種の保存法 | 「種の保存法の在り方検討会」を設置し、希少種の生息地・生育地の保全と再エネ導入の調和を検討し、制度改正も視野に入れる。 |
国土交通省 | 景観法 | 自治体が地域の実情に応じて景観規制を運用できるよう、運用指針を改正。 |
🔎 再エネGメンと全省庁連携
国の監視体制も大幅に強化されています。
現地調査の強化: 2024年度には、全国で1,300件もの現地調査を実施し、そのうち約1,000件に行政指導が行われました。
関係法令違反通報システム: 自治体が違反情報(不適切事案)を登録すると、資源エネルギー庁だけでなく、関係省庁に自動で情報が共有され、迅速に対応できる仕組みが構築されています。
✨ 業界の自主的な行動変容
法律の厳格化に加え、業界団体(JPEAなど)も、「地域との共生・共創」や「自然環境配慮と生物多様性の保全」を行動規範とすることを宣言しました。法令遵守だけではダメで、計画段階からの地域との良好な対話や、自然環境への最大限の配慮といった、一歩踏み込んだ行動が求められています。
4. 地域共生と導入拡大を両立させる「未来の切り札」
国土が狭く、地上設置型の太陽光パネル導入量が既に世界最大級に到達している日本にとって、地域との共生を容易にする次世代技術の期待が高まっています。
それが、ペロブスカイト太陽電池です。
特徴: 軽量で柔軟。軽くて紙のように曲げられるため、これまで設置が難しかった高層ビルの壁や窓、曲面屋根など、文字通り「どこにでも貼れる」太陽電池が実現する可能性を秘めています。
日本の強み: ペロブスカイトの主要原材料の一つであるヨウ素について、日本はチリに次ぐ世界第2位の産出国(世界シェア約30%)なんです。エネルギー源の素材を国内で調達できるという点で、エネルギー安全保障上も非常に大きな意味を持ちます。
国の目標: 2040年までに累積導入量約20GWを目指し、発電コストを10円から14円/kWh以下(自立化可能な水準)に引き下げることを目指しています。
この技術は、導入拡大の制約となっていた「場所の確保」という問題を根本から解決し、景観や自然保護と両立させる「ゲームチェンジャー」として期待されています。
まとめ:地域に信頼される「真の主力電源」へ
ここまで見てきたように、日本の再エネ主力電源化は、エネルギー安全保障の弱点を克服するための国家的なプロジェクトです。
その成功は、制度(FITからFIPへ)や技術(ペロブスカイト)の進化はもちろんですが、地域との共生、つまり社会的な信頼をいかに確立できるかにかかっているものと思われます。
坂本裕尚



