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【新しい世界基準が始まる】「グローバル循環プロトコル(GCP)」とは?

🔶資源循環が“企業競争力”の新たな指標になる時代へ


気候変動への対応が TCFD によって「企業の当たり前」になったように、資源循環の分野にもいよいよ世界共通の評価基準が誕生しようとしています。


その名は GCP(グローバル循環プロトコル:Global Circularity Protocol for Business)


これは、企業の資源利用の効率性や循環性を、国際的に比較可能な形で測定・開示するための初の統一フレームワークです。いわば「資源利用の企業版燃費」。

従来の “取り組んでいます” という定性的なアピールではなく、具体的な数値での説明が求められる時代に移行していきます。


環境省:「ビジネスのためのグローバル循環プロトコル(GCP)」の 初版の公表について(2025.11.12)


GCP概念図
GCP概念図

本記事では、GCPの概要、日本が果たす重要な役割、そして企業にもたらすインパクトについて整理してお届けします。




1. GCP(グローバル循環プロトコル)とは何か?


🔷世界で初めての「資源循環の統一基準」


TCFD(気候変動)、TNFD(自然資本)といった国際基準が整備される中、資源循環の分野では世界共通の開示枠組みが存在していませんでした。

このギャップを埋めるためWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が中心となり開発が進められているのがGCPです。


その目的は明確です。

企業の資源利用を “共通の物差し” で示し、循環経済への移行を後押しすること。


再生材の利用率、材料削減量、製品寿命などの指標を統一し、企業の循環性を世界共通の言語で比較できるようにする狙いがあります。



🔷4つの柱で構成されるフレームワーク


GCPは、TCFDにも採用されている「4つの柱」を採用します。

  • ガバナンス

  • 戦略

  • IRO(環境インパクト・リスク機会)管理

  • 指標・目標


さらに、バリューチェーン全体のどこまでを開示範囲(Scope)に含めるかといったバウンダリーの設定方法や、業種共通で使える循環性指標も定義されます。




2. 日本(環境省)がGCPを“世界標準”に押し上げるキープレイヤー


実は、このGCPの開発において、日本は非常に大きな役割を果たしています。


🔷日本は「中心的な関与」


環境省は2024年にWBCSDと協力文書を締結し、GCPの議論の中心に立っています。特にプラスチック、自動車など日本企業が強みを持つ分野で主導的に指標づくりを進めており、専門家の間では

「日本の案がそのまま世界基準になる可能性が高い」

とも言われています。



🔷10のバリューチェーンで国際標準化を主導


環境省はBRIDGE事業として、循環性指標や情報開示の国際標準化事業を進めています。


対象となるバリューチェーンは以下の10分野:

鉄、アルミ、銅、プラスチック、紙、自動車、繊維、電機、ゴム、建設


これらは、グローバルサプライチェーンにおいて極めて重要な素材・産業であり、日本の標準提案が採用されれば世界中の企業の循環性評価に影響することになります。




3. GCPが企業にもたらすインパクト


🔶COP30(2025年)でVer.1.0が公表予定


GCPは 2025年11月のCOP30 にて初版(Ver.1.0)が発表される予定です。これには、循環性指標や企業の開示フレームワークが含まれ、サステナビリティ報告の必須テーマとして「資源循環」が正式に並ぶ可能性があります。



🔶報告の質が “ 定性 → 定量 ” へ変わる


これまで多くの企業は「リサイクルに取り組んでいます」「循環型社会に貢献しています」といった抽象的な表現にとどまっていました。


しかしGCP導入後は、

  • 再生素材の割合

  • 原材料使用量の削減実績

  • 製品寿命の延伸効果

  • バリューチェーン全体の循環性評価

といった数値で評価されることになります。


まさに、企業の “もったいない” が世界基準で可視化される 時代です。



🔶競争力・資金調達にも直結する


統一基準で比較可能になることで、

  • 投資家や金融機関が循環性を評価指標として活用

  • 循環性の高い製品・ビジネスが市場で高く評価

  • 企業価値や調達金利にも影響

といった動きが本格化します。


対応が遅れる企業は、TCFD導入初期の“出遅れた企業”と同じ状況に陥る可能性があります。




まとめ:GCPは「資源版・TCFD」。企業は準備を急ぐべきフェーズに


GCPは、単なるサステナの新制度ではなく、企業の競争力と資金調達に影響する “ 世界ルール ” になろうとしています。


日本はそのルール作りの中心におり、プラスチック・自動車など多くの産業で日本案が世界基準になる見込みです。


2025年のCOP30公表を前に、企業が着手すべきは:

  • 自社の資源利用データの棚卸し

  • バリューチェーンの循環性評価の準備

  • 再生資源利用や製品寿命延伸の実績づくり

  • サステナ経営への決定:経営層・サステナ部門・調達部門の連携強化


GCPのスタートは、 “ 環境対応 ” の枠を超え、企業の強さを左右する新たな基準の誕生を意味するものと考えます。

坂本裕尚

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