リチウムイオン電池の覚えておきたい「3つのC」、火災リスク、資源問題、国の動き
- 坂本裕尚
- 4 日前
- 読了時間: 5分
身近な問題から本質の問題へ
使い古したスマートフォンや、膨らんでしまったモバイルバッテリー。どう処分すればいいのか分からず、机の引き出しにしまったままになっていませんか?
多くの人が一度は経験するこの小さな悩みですが、実は社会全体で大きな問題を引き起こしています。
近年、リチウムイオン電池が原因とみられる火災が、ごみ収集車や処理施設で頻発しており、深刻な社会問題となっています。
しかし、その「個人の小さな悩み」が数千万単位で集積したとき、それは国家の安全と未来を揺るがす巨大な問題へと姿を変えるのです。
この身近な問題の裏には、国家レベルの経済安全保障や資源問題という、より大きな課題が隠されています。だからこそ今、日本政府は「政府一丸」となって、この問題に本格的に乗り出しているのです。
環境省:リチウムイオン電池総合対策パッケージの策定について(2025.12.23)

1. 問題は「火災」だけでなく「国家の資源問題」である足元の火災リスクと、国家の未来を揺るがす資源リスク
私たちの生活に欠かせないリチウムイオン電池ですが、その裏側には2つの大きな課題が存在します。
一つは、多くの人が認識している「使用時及び廃棄時の火災頻発」という安全上の問題。そしてもう一つが、「経済安全保障・産業競争力強化」という国家戦略に関わる問題です。
リチウムイオン電池の製造に不可欠なリチウム、コバルト、ニッケルといった重要鉱物資源は、その多くを特定の国からの輸入に依存しているのが現状です。これは、地政学的な緊張やサプライチェーンの寸断、価格の乱高下といった外部からの衝撃に対し、日本の経済が極めて脆弱であることを意味します。
しかし、視点を変えれば、国内に眠る膨大な数の使用済み電池は、廃棄物ではなく、豊かな国内資源「都市鉱山」と見なすことができます。これらの電池から貴重な資源を回収・再資源化する体制を確立することは、海外への依存度を下げ、いわば資源の「戦略的備蓄」を国内に創出することに繋がります。これは単なる廃棄物処理ではなく、外部の経済的・政治的ショックから国を守るための、重要な安全保障政策なのです。
この問題の重要性について、政府は次のように指摘しています。
近年、リチウムイオン電池の使用時及び廃棄時の火災が頻繁に発生し、対策が急務となっています。
また、リチウムイオン電池には特定国に依存している重要鉱物資源(リチウム、コバルト、ニッケル)が含まれており、経済安全保障・産業競争力強化の観点から、これらの回収・再資源化の促進も重要です。
2. 「政府一丸」で取り組む、かつてない本気度 ~ 省庁の垣根を越えた「総合対策」~
この問題の深刻さを受け、日本政府は「政府一丸となって」対策に取り組む姿勢を明確にしています。その象徴が、「リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議」の設置です。
環境省:リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議
この会議には、環境省だけでなく、消費者庁、消防庁、経済産業省、国土交通省といった複数の省庁が参加しています。
これは、リチウムイオン電池の問題が単なる
環境省の管轄する「ゴミ問題」ではなく、
消費者庁が関わる「国民の安全」、
経済産業省が担う「産業競争力」、
そして国土交通省が監督する「運輸・物流の安全」
にまで及ぶ、まさに国家横断的な課題であることを物語っています。
さらに政府は、「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」を策定し、2030年までの具体的な目標を掲げました。
リチウムイオン電池に起因する重大火災事故ゼロを目指す
国内に十分なリサイクル体制を構築する
この2つの高い目標は、政府がこの問題解決にいかに真剣に取り組んでいるかを物語っています。
3. リチウムイオン電池の覚えておきたい「3つのC」 ~ 国民一人ひとりの行動が未来を変える ~
政府の大きな取り組みと同時に、私たち国民一人ひとりの協力が不可欠です。
そこで政府は、リチウムイオン電池の正しい扱い方を分かりやすく伝えるため、「3つのC」という行動指針を掲げました。(リチウムイオン電池の覚えておきたい「3つのC」)

賢く選ぶ(Cool choice):PSEマークなど、国の安全基準を満たした製品を選ぶことが第一歩です。安価な非正規製品は、リスクも伴います。
丁寧に使う(Careful use):衝撃を与えたり、高温の場所に放置したりせず、製品の説明書に従って正しく使いましょう。特に、膨張したり、異常に熱くなったりしたバッテリーは、危険のサインです。直ちに使用を中止してください。
正しく捨てる、そして資源循環(Correct disposal with better recycling):お住まいの自治体の指示に従い、家電量販店やスーパーに設置された回収ボックスなどを活用しましょう。決して、燃えるゴミや燃えないゴミには混ぜないでください。これが安全な処理と貴重な資源の再利用を可能にします。
この「3つのC」は、関係省庁が「ワンボイス」で国民に呼びかけている統一メッセージであり、私たち一人ひとりが今日から実践できる、社会を守るための第一歩です。
まとめ:小さな電池から広がる、より良い未来
使い終わったリチウムイオン電池は、単なる「ごみ」ではありません。
それは私たちの安全を脅かす火災の原因にもなれば、国の経済安全保障を支える貴重な「都市鉱山」にもなり得ます。
政府が掲げる壮大な目標も、私たち一人ひとりの行動なくしては達成できません。
「3つのC」を実践することは、単なる市民の義務ではなく、自国の資源を守り、未来の産業競争力と安全保障を確かなものにするための、個人的な投資でもあるのです。
日々の生活に欠かせないバッテリーとの向き合い方を少し変えることで、社会はより安全で持続可能な方向へ進んでいきます。
その小さな電池の先に、より良い未来を一緒に築いていきましょう。
坂本裕尚



