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EU環境規制の最新動向 - グリーン・ディールから産業競争力重視へ、大きく転換するEU政策 -

本記事は、欧州連合(EU)における環境規制の最新動向政治情勢の変化、および産業政策のシフトについて、最新の記事の内容を統合・整理したものです。(EU環境規制の最新動向)


近年のEU政策は、従来の環境重視路線から大きな転換点を迎えており、日本企業にとっても無視できない影響を及ぼし始めています。



サマリー


EUの政策は、2019年当時の「環境偏重(欧州グリーン・ディール)」から、2024年以降は「産業競争力の強化」へと明確に舵を切っています。

その背景には、エネルギー価格の高騰による製造業の苦境、中国製電気自動車(EV)の急速な台頭、そして2024年の欧州議会選挙を受けた右派勢力の伸長があります。


主要な規制である乗用車CO2排出量規則では、2025年目標の柔軟な運用や、2035年の内燃機関車新車販売禁止措置の見直し議論が進んでいます。


また、サーキュラーエコノミーの中核をなす「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」が施行され、デジタル製品パスポート(DPP)を含む、製品ライフサイクル全体を対象とした要件が企業に課され始めました。


さらにEUは、「産業促進法」を通じて現地調達要件の導入を検討しており、従来の市場開放路線から、より保護主義的な産業支援政策へと移行しつつあります。


EU環境規制の潮流変化
EU環境規制の潮流変化

1. EU環境規制の最新動向 - 政策トレンドの変遷とその背景 -


1.1 政策のパラダイムシフト


EUの政策軸は、過去5年間で劇的に変化しています。


2019年:グリーン旋風の時代


環境活動家グレタ・トゥンベリ氏の影響もあり、欧州議会選挙ではグリーン勢力が拡大しました。

フォン・デア・ライエン欧州委員会の第1期は「欧州グリーン・ディール」を掲げ、環境規制を矢継ぎ早に打ち出しました。


2024年〜2026年:産業競争力と保護主義の時代


ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格高騰や、特にドイツを中心とした産業の衰退を受け、政策の主眼は「環境」から「産業競争力強化」へと移行しています。

米国のインフレ抑制法(IRA)や、中国による過剰生産能力を背景とした安価なクリーンテック輸出への対抗も重要なテーマとなっており、加えて「防衛」分野の重要性も急速に高まっています。



1.2 経済的・政治的要因


エネルギー集約型産業(石炭、化学、金属など)では生産活動の停滞が顕著です。

自動車産業においては、急激なEV移行と中国勢の台頭により、過去2年間で部品業界を中心に約10万人の雇用が失われました。


政治面では、2024年6月の欧州議会選挙において中道右派が最大勢力を維持する一方、極右を含む右派勢力が議席を拡大しました。

歴史的背景から極右との連携はタブー視されてきましたが、法案ごとに見れば同じ方向に投票するケースが増え、環境規制見直しの圧力が強まっています。




2. カーボンニュートラル政策と自動車規制の行方


2.1 乗用車CO2排出量規則の見直し


自動車産業との「戦略対話」を通じ、規制には一定の柔軟性が導入されています。

2025年目標については、2025年から2027年までの3年間平均での達成を認める運用が導入され、未達時の巨額な罰金リスクが緩和されました。


2035年のゼロエミッション目標についても、ドイツ政府などの要請を受け、e-fuelやバイオ燃料を認める「技術中立性」の確保に向けた見直し議論が進んでいます。



2.2 EV・バッテリー産業への支援


中国製の安価な小型EVへの対抗策として、EU内製造を条件とした「小型EVカテゴリー」の新設が提案されています。

販売台数計算において1.3倍の係数を適用するなどの優遇措置が想定されています。

また、バッテリー産業については18億ユーロ規模の補助金支援が計画されており、こちらもEU域内製造が条件となる方向です。



2.3 炭素国境調整措置(CBAM)


CBAMは、小規模輸入業者への一部免除措置はあるものの、自動車部品を含む対象製品の拡大が検討されており、引き続き厳格な制度として運用される見通しです。




3. サーキュラーエコノミーとESPRのインパクト


2024年7月に施行されたエコデザイン規則(ESPR)は、従来のエネルギー効率規制を大幅に拡張するものです。


この規則は加盟国に直接適用され、食品や医薬品等を除く、EU域内で上市されるほぼすべての製品を対象としています。製品の開発段階から、再利用性、修理可能性、リサイクル可能性といったライフサイクル全体が要件化されます。



デジタル製品パスポート(DPP)


製品の環境負荷や原材料、リサイクル情報をデジタルで管理・共有するDPPの導入が求められ、サプライチェーン全体の透明性確保が必須となります。日系企業にとっても中期的に大きな影響が予想されます。



自動車設計・廃車管理規則(ELVR)


自動車分野についてはESPRとは別に、ELVRとして独自規則が検討されており、プラスチック再生材の使用義務化などが議論されています。




4. 「産業促進法」と保護主義の強まり


EUは2025年2月下旬にも「産業促進法」を公表する見通しであり、その内容は極めて保護主義的となる可能性があります。

公共調達やEV購入補助金において、EU内での付加価値比率を条件とする現地調達要件の導入や、中国企業を念頭に置いた対内直接投資審査の強化が検討されています。


リークされた草案では、日本などFTA締結国からの供給品を「EU産」とみなす可能性も示唆されていますが、今後の審議過程次第では変更される余地があり、引き続き注意が必要です。




5. 化学物質管理を巡る潮流


化学分野においても、サプライチェーン全体での厳格な情報管理が求められています。

ポストSAICMへの移行、GHS分類やSDS対応の高度化、そしてバイオマスプラスチック普及に向けたマスバランス・アプローチなど、実務対応の重要性が増しています。




まとめ:リアリズムへ移行するEU規制と企業対応


EUの規制環境は、理想主義的な「グリーン」一辺倒から、競争力と産業存続を重視するリアリズムへと明確にシフトしています。


企業には、以下の3点への対応が求められます。


  1. 規制は政治・経済情勢により柔軟化され得ることを前提に、動向を注視すること

  2. 産業促進法など保護主義的政策がサプライチェーンに与える影響を精査すること

  3. DPP導入を見据え、正確なデータ収集・管理体制を早期に構築すること


EU規制は今後も変化を続けます。表面的な「環境規制」だけでなく、その背後にある産業政策と政治力学を読み解くことが、これまで以上に重要となっています。

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