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サーキュラーエコノミー展での経産省、環境省の基調講演(抜粋)

先日、ビッグサイトでサーキュラーエコノミー展等が開催されました。


企業の環境ご担当者はご来場されたかもしれませんが、そのEXPOでの経済産業省、環境省の基調講演にご参加できなかった方々も多いものと思われますので、本記事ではその内容をお伝えします。


日本のサーキュラーエコノミー新時代
日本のサーキュラーエコノミー新時代


1. サーキュラーエコノミー展での基調講演の内容に入る前に


今、私たちが直面しているのは、単なる環境意識の向上ではなく、逃れようのない「物理的な資源制約」と「地政学的リスク」です。


予測によれば、2050年までに銅、鉛、錫(すず)といった重要資源の需要は地球の埋蔵量の2倍に達するとされています。

さらに、供給源が一部の国に過度に集中している現状は、供給断絶が即座に産業の停止を招くリスクをはらんでいます。


この危機を、2050年に120兆円に達する「最大のビジネスチャンス」へと転換するのが、国が進める新たな国家戦略と考えます。




2. 【経済産業省パート】「3R」からの脱却


経済産業省が掲げる戦略の核心部分は、従来の「3R」という概念からの脱却?です。


CEへの転換の必要性
CEへの転換の必要性

3Rから戦略的な「循環経済」への転換


従来の3Rは、主に国内の廃棄物処理や社会的責任(CSR)の側面が強いものでした。

しかし、新時代のサーキュラーエコノミーは、ビジネスの力で国際的な資源・環境制約を突破する「企業戦略」そのものです。



「国富流出」という深刻な焦燥感


三牧課長(経産省)が提示した資料の中で、最も注視すべきは「資源自律」への対応遅れが招くリスクです。


  • 資源の海外流出: 現在、日本国内で発生する中古自動車やペットボトルといった、本来「資源」として価値が高い廃棄物が海外へ流出しています。これは、貴重な国内資源をみすみす他国に明け渡している「国富の流出」に他なりません。

  • 市場からの排除: 資源循環の取り組みが脆弱な製品は、今後、国際市場での競争力を失い、排除されるリスクがあります。



成長を裏付ける数字


日本国内のCE市場規模予測は、2020年の50兆円から2030年に80兆円、そして2050年には120兆円へと拡大が見込まれています。

以下の予測は、もはや循環を無視したビジネスが成立しないことを証明しています。


「2050年まで銅鉛錫等の需要は埋蔵量の2倍」


この絶対的な制約を逆手に取り、資源を国内で循環させる仕組みを構築することこそが、製造業大国・日本の次なる生存戦略なのです。




3. 【環境省パート】実証と設備補助で「循環の現場」を加速させる


経済産業省がルールの構築やマクロ戦略を描く一方で、環境省は「現場の社会実装」を強力に後押ししています。


重要鉱物・再生資源を巡る世界動向
重要鉱物・再生資源を巡る世界動向

経済合理性の壁を打ち破る直接支援


相澤課長(環境省)が強調したのは、机上の空論に留まらない「手触り感のあるアクション」への投資です。


  • 高度リサイクルへの投資支援: これまで、再生材の活用はコスト面で新品(バージン材)に勝てず、経済合理性が合いにくいのが課題でした。


  • 具体的な補助率: 環境省は、実証支援や設備導入に対し、2/3、1/2、1/3といった極めて高い補助率を設定しています。これにより、企業が二の足を踏んでいた大規模な設備投資のハードルを国が直接的に引き下げ、ビジネスとしての損益分岐点を早期に突破させる狙いがあります。


経産省が「改正資源法」によって市場のルールを整え、

環境省が「設備補助」によってインフラを整備する。

この両省の密接な連携が、循環型ビジネスを「慈善事業」から「稼げる事業」へと変貌させています。




4. 【総括】産官学の巨大連合「サーキュラーパートナーズ(CPs)」


この変革を牽引するエンジンが、令和8年(2026年)3月を見据えて活動を加速させている「サーキュラーパートナーズ(CPs)」です。


CPs
CPs

日本産業界の縮図となる強力なエコシステム


CPsの会員数は、最新データで840者に達しています。

その内訳は、大企業247社、中小企業438社(うち小規模企業126社)となっており、まさに日本の産業構造をそのまま凝縮したような巨大連合体です。



業界の「本気」を映し出すワーキンググループ(WG)


CPs内部では、以下の特定の業界・課題ごとに具体的なアクションが進められています。


  • 重点領域: 鉄鋼、プラスチック容器包装、PETボトル、家電、建設


  • 新規立ち上げ: 自動車、アルミニウム これら各WGにおいて、ロードマップの策定から実証事業への移行が急速に進んでいます。



動脈と静脈を繋ぐ革新的事例


単なるリサイクルを超え、「製造(動脈)」と「再資源化(静脈)」が融合する先進事例も生まれています。


  • 石坂産業 × トヨタ紡織: 建設業界における廃棄物再生の実証

  • メルカリ × ECOMMIT × アパレル企業: CEコマース(リユース)促進に向けた、ビジネスモデルそのものの検証




5. デジタル戦略:DPP対応という「国際パスポート」の獲得


製造業が今後、世界市場で戦うための「最強の武器」となるのが、モノの履歴を可視化するCE情報流通プラットフォームです。



欧州規制への対応が「参入障壁」を「パスポート」に変える


現在、欧州では「欧州電池規則」「欧州ELV規則」、そして製品の組成や由来をデジタルで記録する「欧州DPP(デジタル製品パスポート)」の導入が進んでいます。


  • リスク: これらの基準をクリアできなければ、欧州市場から事実上締め出されることになります。

  • 機会(チャンス): 日本が構築する情報流通基盤を活用すれば、材料組成、CO2排出量、解体方法などの情報を透明性高く証明できます。


このデジタル基盤は、国際基準をクリアするための「パスポート」であると同時に、再生材の品質を証明し、製品の環境価値を付加価値に変えるための「戦略的ツール」なのです。




6. 結論:私たちは「資源を捨てる国」から「価値を回す国」へ


今回の両省の指針から得られる最大の教訓は、サーキュラーエコノミーを「コスト」や「義務」と捉えるマインドセットを捨てるべき、ということです。


もはやこれは、資源高騰に対する最強の「リスクヘッジ」であり、再生材市場という新たな「収益源」の開拓に他なりません。

投資支援(GX予算)、法整備(改正資源法)、そしてデジタル基盤。日本が「価値を回す国」へと変貌するための舞台装置は、かつてない精度とスピードで整いました。


「資源」とは、一度使って捨てるものではなく、何度も形を変えて利益を生み出し続ける「資産」です。


貴社のビジネスにおいて、今日から『資源』の見え方はどう変わりますか?


120兆円の未来、この機会を掴み取るのは、この変化を「自分事」として捉え、いち早く投資を決断した者だけではないでしょうか。


坂本裕尚

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