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【2026年4月施行】いよいよ義務化!改正「GX推進法」とGX-ETSで企業が知るべき全貌と実務対応

2026年4月、日本の産業界における脱炭素戦略は大きな節目を迎えました。


改正「GX推進法」が施行され、これまで自主的だった排出量取引が一部の企業にとって「法的義務」へと切り替わったのです。


本記事では、この度施行された法改正の根本的な目的から、いよいよ本格稼働する「GX-ETS(排出量取引制度)」の全体像、そして実務担当者が頭を悩ませる「排出枠の割当方式(ベンチマークとグランドファザリング)」まで、図解を交えながら詳細に解説します。



改正GX推進法の全体像と企業の義務
改正GX推進法の全体像と企業の義務



1. GX推進法とは? その目的と3つの推進手段


正式名称を「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」と呼ぶGX推進法。


その最大の目的は、「温室効果ガス削減」と「産業競争力強化と経済成長」という、一見相反するテーマを両立させることにあります。2050年のカーボンニュートラル実現と、それに伴う経済成長・雇用創出を目指す、国を挙げた一大プロジェクトです。


この目的を達成するため、政府は今後10年間のロードマップを策定し 、主に以下の3つの手段で推進を図っています。


  1. GX経済移行債の発行 政府が20兆円規模の国債を発行し、民間企業の脱炭素投資を誘発するための呼び水とします。

  2. 成長志向型カーボンプライシングの導入 CO2排出量取引制度(GX-ETS)の段階的導入や、将来的な炭素に対する賦課金(化石燃料賦課金)の導入を通じて、炭素に価格を付けます。


  3. GX推進体制の構築 専門組織である「GX推進機構」を設立し、第三者評価やマネジメントなどの運用インフラを整えます。


GX推進法の全体像
GX推進法の全体像



2. 第2フェーズ突入!「GX-ETS」義務化の全体像


今回の法改正の目玉であり、企業にとって最も影響が大きいのが、上記の「② 成長志向型カーボンプライシング」の中核をなすGX-ETS(排出量取引制度)の義務化です。


2023年からの自主的な「試行・自主参加期間(Phase 1)」が終わり、2026年4月より「転換期(法的義務化)」となる第2フェーズが開始されました。



義務化の対象企業


  • 直近3か年度のCO2直接排出量の平均が「10万トン以上」の事業者 


この基準により、国内で約300〜400社の大規模排出者が対象となり、日本全体のCO2排出量の約6割がカバーされることになります 。



新たに課される「MRVサイクル」とコストインパクト


対象企業は、単に削減に努めるだけでなく、法的なルールに則った厳密な管理体制が求められます。

具体的には、以下のサイクルを回す必要があります。


  1. 割当 まず、国が一定の基準に基づき、企業に排出枠を無償で割り当てます。

  2. 算定・検証(MRV) 企業は厳格なデータ管理のもと、毎年度の排出量を算定・報告し、必ず登録確認機関による第三者検証を受けなければなりません。

  3. 償却 報告した排出量と同等の排出枠を確認し、翌年1月31日を期限として国へ償却(返納)します。


ここで重要なのは、排出枠の過不足が直接的なコストや収益(キャッシュイン)に直結するという点です。

自社の排出量が割り当てられた枠を「超過(不足)」した場合、他社の枠やクレジットを市場で購入して補填する必要があります。逆に、削減努力によって枠が「余剰」となった場合は、それを市場へ売却して収益化することが可能です。


なお、市場での取引価格は暴騰や暴落を防ぐため、上限が約4,300円、下限が約1,700円に設定されています。


法的義務化とコスト負担増
法的義務化とコスト負担増



3. 自社の排出枠はどう決まる?「ベンチマーク」と「グランドファザリング」


では、国から無償で割り当てられる「排出枠」はどのように計算されるのでしょうか?

主に「ベンチマーク方式」と「グランドファザリング方式」の2つが採用されています。



ベンチマーク方式


特にエネルギー多消費分野などで適用される方式です。

業種ごとに、各社の製品生産量あたりの排出原単位を比較し、同業種内の「上位X%」に相当する厳しい水準をベンチマークとして設定します。


  • 計算式:基準活動量 × 各年度の目指すべき排出原単位


この水準は毎年度段階的に引き下げられ、割当基準は年々強化されていきます。



グランドファザリング方式


ベンチマークの設定が困難な業種に適用されます。

過去の排出実績を基準とし、そこに一定の削減率を掛けて割当量を決める方式です。


  • 計算式:基準排出量 × (1 - 目指すべき削減率 × 基準からの経過年数) 


例えば、基準となる年度(直近3年度の平均など)から「毎年1.7%削減」といった目標が設定され、毎年度一定比率で無償の割当量が減少していきます。


ベンチマークとグランドファザリングによる割当て
ベンチマークとグランドファザリングによる割当て



4. 今後のロードマップと直面する「コスト増」の論点


2026年から始まる第2フェーズ(法的義務化)を経て、2028年からの Phase 3では「コスト負担増」の時期に突入し、化石燃料賦課金の導入が開始されます。


ここで経営層が留意すべき大きな論点があります。

仮にグランドファザリング方式で「年間1.7%の削減」が義務付けられた場合、もし自社の排出量が削減できず横ばいのままだと、枠の超過分を毎年クレジットで購入し続けなければなりません。

排出規模によっては、単純計算で初年度から数千万円単位のコストアップとなり、それが年々雪だるま式に増えていくリスクがあるのです。


この増大する排出量取引のクレジット価格(コスト)を、自社のサービスや製品の価格にどのように上乗せ・転嫁していくのか、あるいはいかにして自社のGHG排出量そのものを減らしていくのかが、今後の企業の生き残りをかけた最重要課題(論点)となります。


坂本裕尚

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