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さらなる認定制度の追加で変わる資源循環の未来(広域認定制度、プラ新法認定、再資源化認定)

更新日:8月12日

近年、環境問題への意識の高まりとともに、資源循環型社会の実現が喫緊の課題となっています。

この課題に対応するため、複数の法律や制度を通じて再資源化の取り組みを強力に推進しています。


今回は、その中でも特に重要な「廃棄物処理法」の広域認定制度、「プラ新法」の認定制度、そして「再資源化事業等高度化法」の3つの認定制度に焦点を当て、それぞれの特徴と、それらがいかに日本の資源循環を加速させているかをご紹介します。


資源循環に関する3つの認定制度
資源循環に関する3つの認定制度

1. 広域認定制度:メーカーが製品の「終わり」に責任を持つ


「広域認定制度」は、2003年に廃棄物処理法の特例措置として創設されました。この制度の最大の目的は、製品を製造した事業者(メーカー)自らが、広域にわたってその製品の回収・処理・再資源化に責任を持つ「拡大生産者責任」を推進することにあります。


制度の仕組みとメリット

通常、廃棄物の収集運搬や処分には都道府県知事などの許可が必要ですが、環境大臣の広域認定を受けた製造事業者は、この許可なしに自社製品を全国規模で回収・処分することが可能になります。


これにより、以下のようなメリットが期待されます。


  • 処理の効率化と適正化: 製品の性質や構造を熟知しているメーカーが処理を行うことで、より高度な再資源化や適正処理が期待されます。

  • 製品設計へのフィードバック: 回収・再資源化の経験が、よりリサイクルしやすい製品設計の改良につながります。

  • ユーザー(排出事業者)の負担軽減: 製品の廃棄時に処理業者を探したり、マニフェストを交付したりする手間が省け、メーカーに回収から処理まで任せることができます。

  • ブランドイメージの向上: 環境に配慮した取り組みは、企業の社会的信用を高めます。


対象となる廃棄物は、メーカーが製造した製品である産業廃棄物(腐敗・揮発しにくいもの)や、特定の一般廃棄物(例:廃スプリングマットレス、廃パーソナルコンピュータ、廃密閉型蓄電池など)に限定されます。


事例


パラマウントベッドホールディングス株式会社は、2012年からこの広域認定制度を活用し、医療・介護用ベッドの再資源化を強化しています。

同社は回収したベッドの再資源化率99%を達成し、約8万5000台のベッドを再資源化してきました。さらに、使用済みの自社製品から再生した樹脂を一部に採用した在宅向け介護ベッド「楽匠Fit」を発売するなど、日本で初めて水平リサイクルを実用化しています。これは、広域認定制度が企業のサーキュラーエコノミーへの移行を具体的に後押しする好例と言えるでしょう。


広域認定概念図
広域認定概念図

2. プラ新法:プラスチック資源循環をライフサイクル全体で推進


2022年4月に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(通称:プラ新法)は、海洋プラスチック汚染や気候変動問題、海外の輸入規制強化といった課題に対応するため、プラスチック製品のライフサイクル全体での資源循環を促進する画期的な法律です。


従来の法律との違いと主要なポイント


これまでのリサイクル法が「家電」や「自動車」といった製品に焦点を当てていたのに対し、プラ新法は 「プラスチック」という素材そのものに着目 している点が大きな特徴です。

これにより、製品や業界の枠を超えて幅広い企業が資源循環の取り組みに関与することになります。


プラ新法は、主に以下の4つのポイントで資源循環を促進します。


  • 製造業者の環境配慮設計の促進と認定制度: メーカーはプラスチック使用設計指針に沿った製品開発に努め、認定を受けることでグリーン購入法に基づく公共調達での優遇などのインセンティブが得られます。

  • ワンウェイプラスチックの使用合理化: 小売・サービス事業者に対し、使い捨てプラスチック(ストロー、スプーンなど)の無償提供を抑制する取り組みを求め、多量に提供する事業者には勧告等を行うことがあります。

  • 市町村による分別回収と再商品化の促進: 市町村の自主性を尊重しつつ、容器包装の分別回収ルートを活用した製品プラスチックの回収や、複数市町村連携による再商品化を支援します。

  • 製造・販売業者等による自主回収の制度化: 事業者が使用済みプラスチック製品を自主的に回収する認定制度を設け、廃棄物処理業の許可を不要とすることで、回収ルートの多様化を促進します。ただし、再資源化事業計画における「再資源化」には熱回収は含まれません。


事例


プラ新法における「再資源化事業計画」の認定事例としては、 ・三重中央開発株式会社による食品包装資材や工場端材からの物流パレット製造、 ・DINS関西株式会社によるPETボトルと廃棄飲料のリサイクル、 ・浪速運送株式会社によるアパレル由来プラスチック軟質フィルムの材料リサイクル、 ・木村工業株式会社による歯ブラシなどの材料リサイクル、 ・宏幸株式会社による風車ブレードやケーブル被覆の材料リサイクル、 ・天馬株式会社による自社製品への再生樹脂団子の利用 などが挙げられ、様々な業界で具体的な取り組みが進んでいます。


プラスチック資源循環促進法
プラスチック資源循環促進法

3. 再資源化事業等高度化法:静脈産業の変革とイノベーション


2024年5月に公布され、2025年2月1日に一部施行された「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(通称:再資源化高度化法)は、再資源化事業の高度化を促進し、資源循環産業の発展を目指す新たな法律です。

本格施行は2025年秋頃を予定しています。


既存制度との決定的な違いと今後の展望


高度化法は、従来の広域認定制度やプラ新法の自主回収制度とは異なり、リサイクラー(廃棄物処分業者)が認定主体となれる点が大きな特徴です。

また、廃棄物処理法の「廃棄物処理施設設置許可」が不要になる特例制度が創設される予定であり、これは他の認定制度にはない、廃棄物処理施設の迅速な立ち上げを可能にする重要なメリットとなります。


高度化法の主な特徴とメリット


  • 認定主体が拡大: 製品の製造・販売事業者だけでなく、リサイクラーも認定を受けることができます。これにより、リサイクラー主導で事業機会を拡大できる可能性があります。

  • 施設設置許可が不要に: 新規の廃棄物処理施設を設置する際のハードルが大幅に下がります。

  • 回収対象の柔軟性: 広域認定制度が原則自社製品のみを対象とするのに対し、高度化法ではメーカーを問わず使用済み製品を回収できるようになる見込みです。これは、廃棄物回収量確保の課題を解決する可能性を秘めています。

  • 税制優遇措置: 固定資産税の課税標準価格が1/2になる、35%の特別償却が可能になるなどの優遇措置が検討されています。

  • ブランディングと信用力向上: 国の施策と合致した事業として認知度が高まり、社会的信用力が向上します。


再資源化高度化法では、再資源化の基準としてマテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルを前提とし、固形燃料化(RPF)は再資源化に含むものの、廃棄物発電のような直接熱回収は「再資源化」の定義には含まれません。

また、特定の産業廃棄物処分業者(年間処理量10,000トン以上、または廃プラスチック類1,500トン以上)には、排出抑制・再資源化等の目標設定と報告義務が課せられます。


再資源化事業等高度化法
再資源化事業等高度化法

資源循環型社会への確かな一歩 ~ 資源循環の未来へ ~


広域認定制度が製造事業者の責任を、プラ新法がプラスチックという素材全体での循環を、そして再資源化事業等高度化法がリサイクル産業全体の高度化とインフラ整備を促すことで、日本の資源循環システムは多角的かつ強力に推進されています。


これらの認定制度は、企業にとって環境負荷低減の貢献だけでなく、新たな事業機会や競争優位性を生み出すチャンスでもあります。


動脈産業(製造・販売)と静脈産業(廃棄物処理・リサイクル)が連携を強化し、それぞれの強みを活かすことで、持続可能な資源循環型社会の実現に向けた取り組みが加速していくことでしょう。


皆さん、ご一緒に行動していきましょう!

資源循環の未来へ!



各種認定の取得についても、専門スタッフがお手伝いさせていただきます。

ご不明な点がございましたら、無料相談窓口へお気軽にご相談ください。



坂本裕尚

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