top of page

資源有効利用促進法:古紙利用率67%へ引き上げ・カレット76%据え置き — 省令改正案「量から質へ」

1. 何が公表されたのか — 2つの判断基準省令改正案(資源有効利用促進法 改正)


経済産業省は6月26日、資源有効利用促進法第15条第2項に基づく2本の省令改正案を公表しました。

対象となるのは、同法が「特定再利用業種」に指定する5業種のうちの2つ、紙製造業とガラス容器製造業です。


特定再利用業種の事業者には、再生資源の利用に関する「判断の基準」が省令で定められており、その中核が利用率の数値目標です。


今回の改正案の内容は、次の1点に尽きます。

2025年度末で期限を迎えた現行目標を、2030年度を新たな期限として更新する——それだけです。ただし、数値の扱いが2業種で分かれました。



現行目標(〜2025年度)

改正案(〜2030年度)

変化

古紙利用率(紙製造業)

65%

67%

+2ポイント

カレット利用率(ガラス容器製造業)

76%

76%

据え置き


古紙利用率は「紙の原料に占める古紙の質量の割合」、カレット利用率は「ガラスの原料に占める使用されたカレットの質量の割合」と、それぞれ省令上で定義されています。条文の骨格——品質に対する需要者の要求に対応しつつ、技術的かつ経済的に可能な範囲で利用率を向上させ、需要者・国・地方公共団体と協力する——は変わっていません。変わるのは目標年度と数値だけです。


リサイクル:量から質への転換
リサイクル:量から質への転換

【パブリックコメント実施中】 両案とも、e-Govで2026年7月26日23時59分まで意見を受け付けています(所管:経済産業省GXグループ資源循環経済課)。 古紙利用率改正案:案件番号 595126103 カレット利用率改正案:案件番号 595126104 提出様式や宛先は各案件ページの「意見公募要領」をご確認ください。パブリックコメントは提出意見の「数」ではなく「内容」が考慮される制度です。現場の実態に根ざした具体的な指摘こそが価値を持ちます。



2. 「率」を上げ続けた30年 — 目標変遷が語るもの


この改正を「定期的な目標更新」として流してしまう前に、少しだけ歴史を遡る価値があります。判断基準省令の利用率目標は、1991年(平成3年)の再生資源利用促進法(現・資源有効利用促進法)とともに生まれ、以後30年あまり改定を重ねてきました。


古紙利用率の目標は、55%(1994年度まで)に始まり、56%、60%、62%、64%と約5年ごとに刻まれ、2016年改定で65%(2020年度まで)に到達。2021年改定では初めて数値が据え置かれ、65%のまま2025年度を期限としました。そして今回、67%への引き上げ案が示されています。


一方のカレット利用率は、より紆余曲折を経ています。2001年改定では「2005年度までに80%」という高い目標が掲げられ、当時はこれを達成していました。ところがその後、目標値はむしろ引き下げられ、2020年度までの目標は75%に。2021年改定で76%へ1ポイント戻し、今回はその76%を据え置く案です。


図1 古紙利用率とカレット利用率
図1 古紙利用率とカレット利用率

図1が示す構図は対照的です。古紙は、目標の階段を実績が律儀に追いかけ、直近では実績が目標を上回りました。カレットは、80%を達成した過去を持ちながら、実績が74〜77%で頭打ちとなり、目標76%に届いていません。「率を上げれば進歩」という単線的な物語は、どちらの素材でも、もはや成立していないのです。




3. 数字の裏側 — 古紙の「追認」、カレットの「再挑戦」



3-1. 古紙67%:実績を押し上げたのは、リサイクル努力ではなく需要構造の変化


古紙利用率の直近実績は66.7%(2025年)。旧目標の65%をすでに超えています。それなら67%への引き上げは自然な前進に見えますが、実績上昇の中身を分解すると、別の景色が見えてきます。


紙・板紙の古紙利用率は、分野によって極端に異なります。段ボールなどの板紙は93.4%と、ほぼ物理的な限界に達している一方、印刷用紙などの紙は33.2%にとどまります(2025年)。しかも紙分野の利用率は、古紙利用率の高い新聞用紙の生産減により、緩やかに下がっていくと見込まれています。需要者から白色度の向上や異物混入の削減——つまりバージンパルプ並みの品質——が求められることも、紙分野で古紙利用が伸びにくい背景です。


では、なぜ全体の利用率は上がったのか。答えは分野構成の変化です。2020年以降、EC需要などを背景に板紙の生産量が紙の生産量を上回る構造転換が起き、利用率の高い板紙のウェイトが全体の数字を押し上げました。つまり直近の66.7%は、製紙業界のリサイクル努力が2ポイント分前進した結果というより、「紙が減り、段ボールが増えた」という需要構造の変化を映した数字なのです。日本製紙連合会自身、板紙は限界に達し、紙も品質面で使用可能な古紙が限られることから「これ以上の利用率の向上は極めて困難」との認識を示してきました。67%という新目標は、この構造変化が今後も続くことを織り込んだ、現実的な着地点と読むのが妥当でしょう。



3-2. カレット76%:据え置きの正体は「未達への再挑戦」


カレット利用率の据え置きは、古紙とは逆の意味を持ちます。直近の実績は2022年74.3%、2023年73.8%、2024年75.3%と76%の目標をやや下回る帯で推移しており、多くの年で現行目標の76%に届いていません。据え置きとは「達成したから維持」ではなく、「届かなかった目標に、もう5年かけて挑む」という宣言です。


なぜ届かないのか。ガラスびん業界が審議会に提出した資料は、その構造を率直に示しています。


第一に、地理的ミスマッチです。

ガラスびんの生産量の約半分は西日本に集中する一方、びんの消費・排出は首都圏に偏っています。結果として、カレット利用率は東日本82.8%に対し西日本70.5%と、12ポイント超の格差が生じています(図2)。カレットを東から西へ運べばよさそうですが、輸送コストの壁で「ビジネスとして成立しない」のが実情です。しかも、びん用カレットは全量が使い切られており、余剰はありません。


図2 カレット利用率の東西格差(2019年)
図2 カレット利用率の東西格差(2019年)

第二に、色の壁です。

ガラスびんは無色・茶色・その他の色に分かれ、びんに戻せるのは基本的に同じ色のカレットだけ。ところが自治体からの引渡量に占める「その他の色」の比率は約28%と、市場に出回るびんの色構成(約13%)より15ポイントも高くなっています。輸入びん(約8割が「その他の色」)の増加が主因で、これらはグラスウールや路盤材には使えても、びんには戻れません。


第三に、破損と混色です。

収集・運搬の過程でびんが割れて色が混ざると、選別はほぼ不可能になり、残渣として廃棄されます。業界が対策の筆頭に挙げるのは、実は工場の技術ではなく、自治体の収集方式——びん単独・色別収集の採用や、破損を防ぐ平ボディ車での運搬——です。


つまりカレット76%への道は、溶解炉の中ではなく、回収の現場の「質」にかかっています。ガラスびん協会が、カレット増加に伴う異物混入がびん品質を下げる要因になっているとして異物除去設備への投資を進めているのも、同じ文脈です。




4. 「量から質へ」 — 企業と自治体に求められる視点


2つの改正案を並べると、共通のメッセージが浮かび上がります。利用率という「量」の指標は役目を終えつつあり、勝負は回収・選別・原料の「質」に移った、ということです。これは読者の皆さまの実務に、少なくとも3つの示唆を持ちます。



(1)需要側企業:条文の「需要者と協力しつつ」は、皆さまのこと。


判断基準省令は製造業者への基準ですが、条文は一貫して需要者の協力を前提にしています。紙の利用率を抑えているのは、需要側の白色度・品質要求でもありました。コピー用紙や印刷物で再生紙の配合率をどこまで許容するか、容器にガラスびんを使うなら無色・茶色を選べるか、輸入びんから国内充填へ切り替えられるか——調達仕様の一行が、国の利用率を動かします。2026年4月に全面施行された改正資源有効利用促進法で再生プラスチックの利用計画・報告が義務化された今、紙・ガラスでの「需要側の姿勢」は、自社の資源循環方針の一貫性を示す試金石にもなります。



(2)自治体:収集方式が、国の目標達成を左右します。


カレットの項で見たとおり、びん単独・色別収集と平ボディ運搬の採否が、利用率の天井を決めています。混合収集で破損・混色したびんは残渣となり、最終処分場の延命という自治体自身の課題にも跳ね返ります。分別収集計画の見直しサイクルで、ガラスびんの収集・運搬・選別工程を一度点検する価値は十分にあります。



(3)全業界へ:古紙とガラスの30年は、再生プラの「未来の教科書」


改正法により、自動車・家電・容器包装では再生プラスチックの利用目標を各社が計画として掲げるフェーズが始まりました。その先輩にあたる古紙・カレットの歴史は、率の目標がやがて突き当たる壁——分野別の限界、品質要求とのトレードオフ、静脈側の質への依存——を先取りして見せています。自社の再生材利用計画を「率」だけで設計すると、同じ壁に早晩ぶつかる。目標設計の段階から、原料の質・調達地理・回収スキームを織り込んでおくことが、5年後の説明可能性を分けます。


なお、冒頭のとおり両案のパブリックコメントは7月26日締切です。

回収現場や調達実務の肌感覚に基づく意見は、まさに制度が必要としている情報です。




5. まとめ — 数値目標の「卒業試験」にどう向き合うか


今回の2本の省令改正案は、条文にすれば数字と年度を書き換えるだけの、一見地味な改正です。しかしその数字の裏には、「利用率を上げる」ことを共通言語に走ってきた日本の資源循環30年が、量の限界に到達したという事実が刻まれています。古紙の67%は構造変化の追認、カレットの76%は質の壁への再挑戦。次の5年で問われるのは、率そのものではなく、その率を支える原料の質、回収の設計、そして動脈と静脈の連携です。


こうした「質」の議論は、一社単独では完結しません。調達仕様の見直し、回収スキームの再設計、再生材利用計画の策定——動脈側と静脈側の間に立つ視点が不可欠です。



■ CYCLETANKのサーキュラーエコノミー支援 CYCLETANK合同会社は、資源循環の「量から質へ」の転換期において、企業・自治体の実務を支援しています。 ・再生材利用計画の策定支援(改正資源有効利用促進法対応) ・調達仕様・環境配慮設計への再生材品質要件の組み込み ・回収・選別スキームの診断と再設計(自治体・業界団体との連携設計を含む) 利用率目標の次に来る「質」の議論に、いまから備えたい環境部門の皆さまは、ぜひお問い合わせフォームよりご相談ください。


【出典・参考資料】


  1. 経済産業省「紙製造業に属する事業を行う者の古紙の利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令の一部を改正する省令(案)」(2026年6月26日公表、e-Gov案件番号595126103)

  2. 経済産業省「ガラス容器製造業に属する事業を行う者のカレット利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令の一部を改正する省令(案)」(同、案件番号595126104)

  3. 公益財団法人古紙再生促進センター「日本の紙リサイクル」(2026年4月)

  4. 経済産業省 産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会「資源循環経済政策を巡る動向とそのあり方について」(資料7、令和5年12月)

  5. 日本製紙連合会「古紙利用率65%目標について」

  6. 日本ガラスびん協会「自主行動計画目標と実績(カーボンニュートラル行動計画 2024年実績報告)」

  7. ガラスびん3R促進協議会「びんカレットの使用状況と課題」(産業構造審議会 廃棄物・リサイクル小委員会 資料4-2、令和2年12月)

  8. ガラスびん3R促進協議会「ガラスびんのリサイクル」(現況の課題・定性情報) ほか公表資料

bottom of page