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スクラップヤード許可制 - 第1回検討会で示された基準案 -

  • 金属くずや雑品スクラップを有価で売却している。

  • 使用済みの機器を構内に一時保管してから引き渡している。

こうした取引を「有価物だから廃棄物処理法の対象外」と整理してきた企業は少なくないはずです。

その前提が、いま書き換えられようとしています。


令和8年6月19日公布の改正廃棄物処理法により、有価物である使用済金属・プラスチック物品の保管・再生に、都道府県知事等の許可制(スクラップヤード許可制)が導入されます


そして令和8年7月27日、環境省は「スクラップヤード環境対策技術検討会」の第1回会合を開催し、政省令で定めるべき基準の具体案を示しました。


本記事では、確定した内容と提案段階の基準案を切り分けて整理し、企業・自治体の環境部門が今から着手できることをまとめます。


スクラップヤード許可制の徹底解説
スクラップヤード許可制の徹底解説

1. なぜ今、スクラップヤード許可制なのか


環境省が令和7年度に都道府県等へ実施した実態調査によれば、全国のスクラップヤードは4,625事業場にのぼり、その一部で計275件の生活環境保全上の支障が報告されています。内訳は騒音・振動103件、飛散・流出44件、火災35件(うちリチウムイオン電池起因6件)、水質汚濁30件などです。


自治体は条例で対応してきましたが、少なくとも5県8市にとどまり、規制の緩い自治体へ事業場を移転する事業者の存在も指摘されてきました。100以上の都道府県及び政令市が全国統一の制度創設を要望していたのが実情です。


もう一つの背景が資源の海外流出です。

使用済鉛蓄電池については、令和5年の鉛くず輸出量が令和2年の約10倍に急増する一方、取り出された鉛を輸出手続なしに持ち出そうとした事例が確認されています。


そして見落とされがちなのが公正競争の問題です。

環境対策を講じない事業者は操業コストを抑えて買取価格を高く設定できるため、適正に投資している事業者ほど不利になる構造が生まれていました。



2. 廃棄物処理法改正で確定したこと


改正法は、使用を終了して収集された物品で、その全部又は一部が金属又はプラスチックから成るものを「使用済金属・プラスチック物品」と定義しました。重要なのは、この定義が有価物を対象に含んでいることです。


従来、スクラップヤードで扱われる有価物は原則として規制対象外であり、これを悪用して実際には廃棄物であるものを「有価物」と称する事業者も存在した、と環境省は指摘しています。


届出制から許可制へ

改正法は平成29年改正で導入された有害使用済機器保管等届出制度を廃止します(第17条の2関係)。家電4品目と小型家電28品目を対象に届出を義務づけてきた制度で、対象者はそのまま新たな許可制度に移行します。許可制では経理的基礎、施設の基準適合、事業遂行能力、欠格要件への非該当が求められ、事前審査を経なければ事業を行えません。

罰則も一変します。現行制度では届出義務違反の罰則は30万円以下の罰金でした。新制度では無許可営業、許可の不正取得、無確認輸出等について最大5年の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金(併科あり)、法人には最大3億円の罰金が科されます。


既存の許認可事業者は「みなし許可」

廃棄物処理業者や施設設置者に加え、資源有効利用促進法、自動車リサイクル法、小型家電リサイクル法、プラスチック資源循環法、再資源化事業等高度化法の許認可事業者(一部の委託先を含む)は許可事業者とみなされます。ただし免除されるのは許可手続であって、保管・再生基準の遵守や帳簿作成は同様に義務づけられます


輸出には環境大臣の確認が必要に

バーゼル法の特定有害廃棄物等に該当するもの(使用済鉛蓄電池、電子スクラップ、基準未達の使用済プラスチック等)には国内再生原則が適用され、輸出には環境大臣の確認が必要になります。無確認輸出は罰則の対象で、未遂罪・予備罪も措置されました。海外への売却ルートを持つ事業者には、取引スキームそのものの見直しが必要になり得る改正です。



3. 第1回検討会で示された基準案


基準案の骨格は、現行の有害使用済機器に関する基準を土台としています。

項目

示された基準案

現行(有害使用済機器)

囲いの設置

周囲に設置。荷重がかかる場合は構造耐力上安全であること

同様(施行令第16条の3)

掲示板

見やすい場所に設置。許可番号・許可年月日を記載項目に追加

縦横60cm以上、品目・管理者等を記載

保管高さ

最大5m(電池等の混入が排除できない場合)。堅牢な囲いに接しない面は50%の勾配

最大5m(施行規則第13条の6)

区分保管・面積

保管単位200㎡以下、間隔2m以上(仕切りがある場合は間隔不要)

同様(施行規則第13条の8)

汚水・地下浸透防止

底面を不浸透性材料で覆う。油水分離装置・排水溝の設置

同様(施行令第16条の3)

帳簿

毎月末までに記載終了、1年ごとに閉鎖、5年間保存

同様(施行規則第13条の12)

適用除外

事業場面積が100㎡を超えない場合

100㎡(施行規則第13条の2)


「単一素材か、混合か」という分岐


数値そのもの以上に注目すべきは、基準の発動条件です。

保管高さ5mの上限も、区分保管・面積200㎡の制限も、いずれも「金属スクラップとプラスチックスクラップが混在し、電池等の発火のおそれがある物品の混入が排除できない場合」を前提に提案されています。自らの荷重による自然発火のおそれがあるためです。


逆に、単一素材(金属スクラップのみ/プラスチックスクラップのみ)を保管する場合には、高さの上限も区分保管・面積制限も設ける必要はないのではないか、という方向が示されています。埼玉県・千葉県では条例上すでにこの運用がとられ、自治体ヒアリングでも「安全上の課題は出ていない」との回答が紹介されています。


なお品目別の上乗せとして、使用済鉛蓄電池には平成17年の技術指針と同様の基準(端子部の絶縁措置、原則屋内保管、平置き、3段重ね以下など)を適用する方向が示されました。ただし事業者団体からは、絶縁措置や屋内保管など5点で「一部対応できていない状況」が報告されています。家電4品目については、有害物質の溶出防止に加え冷媒フロンの適切な回収措置を規定する案が示されています。



4. 自社は対象になるのか ― まだ決まっていない論点


「うちはスクラップヤード事業者ではない」と考える読者も多いでしょう。しかし対象範囲の外縁は、現時点でまだ確定していません。


改正法が許可不要としているのは、

  1. 事業場の敷地面積が政令で定める面積以下である事業者(100㎡を超えない面積とする案

  2. 国、自治体など適正かつ確実に行うことができる者

  3. 完成品の製造における工程(製鉄、精錬等)の一部として行われる再生を行う者

の3類型です。


参考までに現行の有害使用済機器の届出制度では、これに加えて「本業に付随して保管のみを一時的に行う場合」(修理業者が交換後の故障品を一時保管するケース等)も除外されています。新制度で同様の整理がなされるかは、今後の政令を待つ必要があります。

さらに第1回検討会の資料3 p.31では、次の事項が今後の整理課題として挙げられました。


  • 「完成品の製造工程」「再生原料(卒業品)」の判断ポイント ― どこまで処理すれば「使用済金属・プラスチック物品」でなくなるのか

  • サテライトヤード ― 保管場所と再生・製造施設が離れている場合、どこまでが許可対象か

  • 使用済物品になるタイミング ― リユース品、有価で下取りした物品、交換した機器等との関係

  • 保管業と再生業に該当する行為 ― 「譲渡のための保管」に該当しない保管(寄託を受けた保管など)の扱い


つまり、「自社が対象か」を今の時点で断定的に判断することはできません。逆に言えば、これらは今後のガイドラインやパブリックコメントで固まっていくため、自社の実態に照らして影響が大きい論点があれば、意見提出の機会を捉える価値があります



5. 企業・自治体が今から着手できること


施行は公布日から2年6か月を超えない範囲、すなわち令和10年12月19日より前です。

まだ先に見えますが、政省令は令和8年度内を目途に整備され、法施行前に受付準備の整った都道府県から許可申請の受付・審査が始まります。検討会も年度内の取りまとめを目指しています。今年度中に制度の形が決まる、と考えたほうが実態に近いでしょう。


① 売却先を棚卸しする。

有価売却は委託契約書もマニフェストも不要なため、売却先の情報が社内に残っていないケースが少なくありません。どの品目をどこへどのくらい売却しているかの一覧化が出発点です。


② 構内保管の面積と高さを実測する。

適用除外の目安として示されている100㎡は10m×10m、決して大きくありません。使用済機器や金属くずを構内に集積している事業場では、保管の用に供している面積を一度測っておく価値があります。


③ リチウムイオン電池の分別を見直す。

第3章で触れた「単一素材か、混合か」の分岐は、排出事業者にとって最も実務的な意味を持ちます。保管高さ5mも200㎡の面積制限も、発動条件は「電池等の発火のおそれがある物品の混入が排除できない場合」でした。裏を返せば、受け入れる側の規制コストは、排出する側の分別品質によって決まるということです。この構造が制度として固まれば、電池の混入リスクは価格や引取条件に反映されていくと考えるのが自然でしょう。


④ 輸出ルートを点検する。

使用済鉛蓄電池や電子スクラップを海外へ売却している場合、環境大臣の確認が必要になります。未遂罪・予備罪まで措置されており、リスクの性質が変わります。


⑤ 自治体は条例と法の関係を整理する。

条例制定済みの自治体では法制度との重複・上乗せの整理が、未制定の自治体では許可事務の受け皿づくりが課題です。都道府県知事の権限は指定都市及び中核市への移管が予定されています


第2回検討会の日程は本記事執筆時点で「準備中」です。環境省の検討会ページを定期的に確認することをおすすめします。



まとめ


今回の改正は、「有価物であれば廃棄物処理法の外側にある」という長年の整理を、部分的にではあれ書き換えるものです。直接の名宛人はスクラップヤード事業者ですが、その川上にいる排出事業者にとっても、売却先の選定や社内の保管・分別のあり方に影響が及びます。


同時にこの制度は、適正に投資してきた事業者を守る仕組みでもあります。規制対応をコストとしてだけでなく、取引先を選ぶ基準として捉える視点が求められるでしょう。


■ CYCLETANKのサービス|廃棄物管理・適正処理支援

CYCLETANK合同会社では、廃棄物管理・適正処理に関する実務支援を行っています。

有価売却先を含めた取引先の適正性確認、社内保管ルールの整備、法改正を踏まえた管理体制の見直しまで、企業・自治体の環境部門の実情に合わせてご支援します。

「自社が規制対象になるのか判断がつかない」という段階からのご相談も歓迎します。


出典



  • 中央環境審議会「今後の廃棄物処理制度のあり方について(意見具申)」令和8年4月


  • 環境省「有害使用済機器の保管等に関するガイドライン(第1版)」平成30年3月


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