衣類回収ビジネスのヒント ──行政回収・集団回収に「民間連携」も
- 坂本裕尚
- 10 分前
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環境省は2026年7月21日、「自治体向け衣類回収ガイドラインに関する検討会」の第1回を開催しました。年度内の策定を目指すこのガイドラインで注目すべきは、整理範囲に「民間回収との連携」が正面から位置づけられた点です。
本記事では、公開された骨子案と議事概要、そして2026年3月公表の「使用済衣類の回収に関するグッドプラクティス集」から、自治体が民間事業者と組む際に決めるべき論点を、連携の型・専ら物の判断・コストの3点に絞って整理します。(衣類回収ビジネスのヒント)

1. ガイドラインが自治体へ「民間連携」を入れた意味
1-1. 環境省から「回収していない自治体」も含む 全自治体へ
骨子案(資料4)では、想定読者を行政回収を実施している自治体・していない自治体のいずれも含む全自治体、および自治体と連携する関係主体としています。そのうえで、自治体が実施できる取組の方向性を「行政回収・集団回収」と「民間回収との連携」の2つに整理しました。
さらに整理範囲について、行政回収・集団回収に限定せず、民間回収との連携を含むことを明記する方針が示されています。これまで自治体の衣類回収といえば行政回収・集団回収の二択でしたが、第三の選択肢が国のガイドラインに明示的に位置づけられることになります。
1-2. 背景にある数字
2024年度時点で、行政回収・集団回収のいずれも実施していない自治体は568市区町村(32.6%)。人口規模別に見ると、1万人未満の自治体では55.1%、1万人以上5万人未満では30.1%が未実施です。人手と予算の制約が小さい自治体ほど重くのしかかる構図です。
一方、連携協定の締結等を通じた民間回収との連携は、公開情報から50件以上の事例が確認されています。制度整備を待たずに、現場では官民連携が先行して積み上がっている状態といえます。
【回収量の目安】 資料4では、2030年の25%削減目標が達成された場合の「1人当たりの布類の資源化量」の目安を約1,900g/人・年と推計しています。この水準を上回る自治体は限られており、多くの自治体にとって回収量の増加は避けられない課題です。
2. 民間連携の「型」は4つに分けて考える
先行事例を、自治体の関与度と費用負担の観点から整理すると、次の4類型に分かれます。

型A:場所貸し型
公共施設に民間事業者の回収ボックスを設置し、連携協定を結ぶ形です。兵庫県西宮市は令和6年11月から本庁舎等の公共施設と民間商業施設の8拠点に、群馬県板倉町は令和8年3月から町役場と公民館の計5か所に設置しています。着手のハードルが最も低い一方、回収量は設置拠点数に規定されます。
型B:地域プラットフォーム型
複数の事業者と複数の自治体が一つの回収網を共同運営する形です。大阪府とH2Oリテイリング・青山商事ら11社・6自治体による「oHOHo CYCLE PROJECT」は、回収ボックス名称や仕組み・ツールをオープンソース化し、令和8年2月時点で76拠点まで拡大しました。京都市が2年間の実証・支援を経て民間の自走につなげた「RELEASE⇔CATCH」も同型です。
型C:広報連携型
自治体は民間の回収拠点を周知・マップ化するだけで、回収そのものには関与しない形です。費用負担がほぼ発生しないため、予算措置を待たずに着手できます。資料3・21ページでは、回収品の量を高めるための工夫の一つとして、民間事業者の回収の取組を周知し多様な排出の選択肢を提示する例が、環境省調査で確認された取組として挙げられています。
型D:既存インフラ活用型
自治体の収集運搬体制や施設を組み合わせる形です。愛知県蒲郡市では、地域の収集事業者が週2回、市内10店舗の回収ボックスから回収し、市のクリーンセンターで一時保管。一定量が貯まった段階で故繊維事業者が月1回引き取る仕組みを構築しました。運搬効率を確保する設計として参考になります。
【選択の判断軸】 どの型を選ぶかは、①職員の人手、②予算措置の可否、③地域内の故繊維事業者の立地、の3変数でほぼ決まります。特に③が欠けている地域では、型Aや型Bのように引受先を持つ事業者と組むこと自体が目的になります。
3. 専ら物──「化学繊維かどうか」では決まらない
民間連携で最初に突き当たるのが、廃棄物処理法上の「専ら物」の扱いです。
3-1. 7割の自治体が判断を明確化していない
資料3・23ページによると、衣類の専ら物としての取扱いを「明確化していない」自治体は1,242市区町村(71.3%)で最多。次いで「繊維の素材に関わらず、専ら物としての取扱いを認めている」が続きます。
議事概要では、明確化していない理由について環境省が、通知や事務連絡等の認知度が低いこと、衣類回収に関する相談事例が少なく明確化の必要性を感じていない自治体があることをヒアリングで確認していると回答しました。田崎座長は、判断の自由度を持たせるためだと解釈していたが実際の理由を丁寧に確認することが重要だと述べています。「あえて曖昧にしている」のではなく「検討していない」ケースが相当数あるということです。
3-2. 判断軸は素材ではなく「受入先と再生技術の有無」
規制改革・行政改革ホットラインへの回答(令和5年12月13日取りまとめ)は、専ら物として収集・運搬業許可を不要とできるかは、「古繊維」に化学繊維を含む古衣料などの繊維製品が含まれるかではなく、当該繊維の受入先があり、かつ再生利用できる技術があるかによって判断されると整理しています。
令和5年2月3日付通知(環循適発第2302031号ほか)も、専ら再生利用の目的となる廃棄物であっても、それが再生利用されないと認められる場合には許可が必要であるとしています。

3-3. 業界側が指摘する「需要制約」
この論点をより深く理解するうえで示唆的なのが、日本古着リサイクル輸出組合の窪田恭史委員の発言です。議事概要によれば、窪田委員は、衣類は回収の仕組みや業者の有無が原因で回収が進まないのではなく、需要が限られている結果として業者が都市部に集中し地方に少ないのが実態であり、この因果関係を理解しないまま回収の仕組みを整えても、受け手が増えない限り回収は進まないと指摘しました。
専ら物についても、再生利用の仕組みと受け手が整っていれば専ら物となるが、受け手がいなければいかなる衣類も専ら物になり得ないと述べ、素材の種類に基づく一律の解釈では進められないと付言しています。
この指摘は、出口側のデータとも整合します。故繊維事業者101社を対象としたアンケートでは、選別後の処理は中古衣料が約5割で最多である一方、1〜2割はリユース・リサイクルされずに焼却・サーマルリカバリーに回っています。経済産業省の資料でも、産業用ウエスや反毛の需要低下が課題として挙げられてきました。
【実務上の確認方法】 資料3の自治体事例では、A市が引渡し先の資源物業者とその売却先の故繊維事業者を訪問して処理状況を確認、B市が再生ルートに沿った衣類・金銭の動きを聞き取りまたは資料提出で確認しています。協定を結ぶ前に、出口までのルートを自ら確認した記録を残すことが、後の説明責任につながります。
3-4. 品目リストより「濡らさない」設計
窪田委員はさらに、他の資源物は多少濡れても一次資源に戻すため支障が小さいが、衣類は再び着用されることが前提であるため濡れは致命的だとして、雨の日は回収を行わない、ヤード保管場所は屋根のある場所とするといった配慮を回収方法に組み込む必要があると述べています。対象外品目の細かな列挙よりも、こちらの方が大きな課題だという指摘です。
なお骨子案では、禁忌品の例として空調服のようなリチウムイオン電池やケーブルが搭載されている衣類が挙げられ、衝撃や破損による発煙・発火の可能性が指摘されています。回収ボックスの運用設計では見落とせない論点です。
CYCLETANKでは、自治体と民間事業者の連携スキーム設計をご支援しています。 専ら物の判断整理から、地域の受入事業者の選定・マッチング、回収オペレーションの設計まで、サーキュラーエコノミー支援の一環として対応可能です。→ お問い合わせは こちら
4. コストの実数値を押さえる
グッドプラクティス集には、モデル実証事業のコスト実績が掲載されています。予算要求の根拠として使える貴重なデータです。
事例 | 回収実績 | コスト |
ヒューマンフォーラム/京都市(86か所) | 27,032kg(令和4年9月〜令和6年6月) | ランニング約56万円/月 |
oHOHo CYCLE PROJECT(76拠点) | 4,972kg(令和7年11〜12月) | イニシャル約570万円 |
とよなか市民環境会議アジェンダ21/豊中市 | 回収約2.57トン(令和6年度) | イニシャル約54万円/ランニング約220万円 |
ゼンドラ/藤沢市(クリーニング店等) | 1,914kg(31日間) | イニシャル約8万円/ランニング約45万円 |
京都市の事例のランニングコストには、仕分け委託費・運搬費・倉庫賃借料・光熱費・諸経費が含まれます。
※各事例は実施期間・拠点数・回収対象が異なるため、金額や回収量を単純に比較することはできません。自庁の条件に近い事例を選んで参照してください。
4-1. 運搬方式の分岐点
特に実務的に重要なのが、oHOHoが示した分析です。月3トン程度の回収量ではルート回収より個配回収にコスト優位性があり、損益分岐点は月約12トンと算出されています。拠点を増やす前に、想定回収量から運搬方式を逆算する必要があるということです。

4-2. 契約段階で詰めるべき条件
骨子案18ページのSTEP04では、委託仕様・入札要件として再資源化率や適正処理の証跡提出等の整理、契約金額・単価体系として逆有償条件や残渣返却枠の事前協議が挙げられています。過年度の故繊維事業者ヒアリングでは、回収物の残渣返却枠の設定ニーズが多数確認されたとされており、協議の初期段階でここを詰めておくことが事業の持続性を左右します。
5. 検討手順と今後のスケジュール
骨子案は、衣類回収の検討手順をSTEP01からSTEP06まで整理しています。★印は既に回収を実施している自治体にも参照が推奨される箇所です。
STEP01:現状把握と課題整理(組成調査、市民アンケート、地域内事業者の状況)
STEP02:目標・方針の検討(★専ら物の取扱い方針を含む)
STEP03:具体スキームの設計・協議(★対象品目・分別ルールの具体化)
STEP04:関係者との協議・契約(★委託仕様、残渣返却枠等)
STEP06:本格実施後(★トレーサビリティ情報の整理・開示)
検討会は今後、令和8年8〜11月頃に自治体5件・事業者5件のヒアリングを実施し、12月頃の第2回で素案、12〜1月頃に複数自治体から文書ベースで意見を聴取、令和9年2月頃の第3回で案を固める予定です。
意見聴取の対象になる可能性を踏まえれば、いま自庁の回収実態と専ら物の判断状況を棚卸ししておく価値があります。
なお環境省・経済産業省・消費者庁は2026年8月6日、「サステナブルファッション・パートナー制度」の会員募集を開始しました。企業だけでなく自治体・学校も申込可能で、令和8年9月3日までに書類を提出すれば「サステナブルファッション・キャンペーン」の総会に招待されるとしています。
まとめ(衣類回収ビジネスのヒント)
ガイドラインは民間回収との連携を整理範囲に含める方針であり、自治体の選択肢は実質3つに広がる
連携の型は4つに整理でき、地域内の故繊維事業者の有無が選択を大きく左右する
専ら物の判断軸は素材ではなく「受入先と再生技術の有無」。7割の自治体が未整理のまま
業界側は需要制約こそが本質と指摘しており、回収の入口だけを整えても出口がなければ機能しない
回収量から運搬方式を逆算し、残渣返却枠等の契約条件を初期に詰めることが持続性の鍵
CYCLETANKは、自治体・企業の資源循環に関する実務をご支援しています。衣類回収における官民連携スキームの設計、専ら物を含む廃棄物処理法上の整理、地域の受入事業者とのマッチング、回収オペレーションと採算性の検討まで、一次資料に基づいてお手伝いします。ガイドライン策定を見据えた検討の初期段階からご相談ください。→ お問い合わせは こちら
出典
環境省「自治体向け衣類回収ガイドラインに関する検討会(第1回)」配布資料・議事概要(令和8年7月21日開催) https://www.env.go.jp/recycle/recycling/fashion/page_00004.html
資料3「サステナブルファッション及び衣類回収を巡る状況について」
資料4「『自治体向け衣類回収ガイドライン(仮称)』骨子案について」
資料5「自治体向け衣類回収ガイドライン(仮称)の策定に向けた調査方針について」
環境省「~自治体・事業者向け~使用済衣類の回収に関するグッドプラクティス集」(2026年3月) https://www.env.go.jp/content/000385057.pdf
環境省「サステナブルファッション・パートナーを募集します!」(2026年8月6日報道発表) https://www.env.go.jp/press/press_05393.html



