プラスチック資源循環戦略の6つのマイルストーン
- 坂本裕尚
- 11 分前
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2026年8月21日、環境省の中央環境審議会プラスチック資源循環小委員会と、経済産業省の産業構造審議会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループの合同会議(第12回)が開催され、2019年に策定された「プラスチック資源循環戦略」の点検が始まりました。
示されたのは6つのマイルストーンの達成状況です。
目標に近づいている項目がある一方、基準年の水準を下回っている項目もあり、進み方は分かれています。この点検結果は、そのまま今後2年間の制度検討の入口になります。
公表資料をもとに到達点を整理したうえで、数字を読むときの注意点と、企業・自治体が備えるべきことを解説します。

1. 2027年3月に向けた点検が始まった
プラスチック資源循環戦略は、2019年5月に関係9省庁の決定として策定されました。
「3R+Renewable」を基本原則に置き、2030年から2035年を期限とする6つのマイルストーンを掲げています。
策定から7年が経過し、今回の合同会議はその中間点検にあたります。特徴的なのは、点検して終わりではなく、その先の検討体制が同時に示された点です。
6つの目標は「設計」「排出・回収・処理」「需要・価値創出」の3領域に集約され、それぞれにタスクフォース(TF)が設置されます。各TFは年度内に2回開催され、成果は2027年3月頃の合同会議で集約されます。
つまり、今回「達成できていない」と整理された項目は、そのまま今後2年間の制度強化の検討対象になります。どこが未達なのかを知ることは、次に来る規制の方向を読むことと同じです。
2. プラスチック資源循環戦略の6つのマイルストーンの到達点
まず、6つの目標と直近の実績を並べて確認します。(プラスチック資源循環戦略の6つのマイルストーン)
マイルストーン | 期限 | 目標 | 直近実績 | |
① | ワンウェイプラスチック(容器包装等)の排出抑制 | 2030年 | 累積25%削減 | 20.2%削減(2024年) |
② | 製品デザインのリユース・リサイクル可能化 | 2025年 | 100% | 17%/熱回収を含めて87%(2025年調査) |
③ | 容器包装のリユース・リサイクル | 2030年 | 6割 | 34.4%(2024年) |
④ | 使用済プラスチックの有効利用 | 2035年 | 100% | 89%(2024年) |
⑤ | 再生利用(再生素材の利用)の倍増 | 2030年 | 10% | 4.6%(2024年) |
⑥ | バイオマスプラスチックの導入 | 2030年 | 約200万トン | 21万トン(2024年度) |
出典:合同会議(第12回)資料3 p.29〜p.37

達成に近いのは④と①です。一方、⑤の再生利用は目標10%に対して4.6%、⑥のバイオマスプラスチックは200万トンに対して21万トンと、差が大きく開いています。
資料は、とりわけリユース・リサイクル、再生利用及びバイオマスプラスチック導入については更なる施策の強化が求められる、と総括しています。かなり率直な自己評価です。
3. 数字の読み方――3つの落とし穴
今回公表された数字には、そのまま引用すると実態を取り違えるものがあります。社内報告や自治体の計画に使う前に、3点を押さえておくことをおすすめします。
落とし穴1 「87%」と「17%」は同じ調査の数字
マイルストーン②について、環境省・経済産業省は2025年6〜7月に主要業界団体(56団体・1266社)を対象にアンケート調査を実施しました。有効回答361社の結果は次のとおりです。
全ての容器包装・製品がリユース又はリサイクル可能……17%(63件)
全ての容器包装・製品がリユース、リサイクル又は熱回収可能……70%(253件)
「87%」はこの2つを足した数字で、熱回収しかできない製品を含んだ達成率です。
マイルストーン②の原文は「技術的に分別容易かつリユース可能又はリサイクル可能なものとすることを目指す(それが難しい場合にも、熱回収可能性を確実に担保することを目指す)」です。括弧書きを含む広い定義なら87%、狭い定義なら17%となります。
さらに、同じ資料の中でも採用値が分かれています。個票(p.32)は17%と87%を併記していますが、統合表(p.37)は87%のみです。引用するときは、どちらの定義かを必ず明示してください。 87%だけを示すと、実態より大幅に進んでいるように読まれます。
落とし穴2 「有効利用89%」の大部分は熱回収
マイルストーン④の有効利用率89%は、6つの中で最も達成に近い数字です。ただし資料自身が、埋立・単純焼却の代替は熱回収であり、リサイクル率は約25%にとどまる、と注記しています。

有効利用率は、埋立と単純焼却を除いた割合です。したがって熱回収が増えれば、それだけで数字は上がります。マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを合わせた狭義のリサイクル率は、その4分の1程度です。
なお、リサイクル率には資料内で幅があります。p.34は約25%ですが、p.38のマテリアルフロー(総排出量911万トン、マテリアルリサイクル180万トン、ケミカルリサイクル23万トン)から算出すると約22%です。いずれにせよ、89%の大部分を熱回収が占める構造は変わりません。
この違いは実務にも効きます。EUのPPWRやELVRのように再生材の含有率を義務づける制度が広がるなかで、熱回収は再生材の供給になりません。有効利用率89%を達成度として社外に示すと、取引先や投資家の評価軸とずれます。
落とし穴3 「再生利用4.6%」は基準年を下回っている
最も厳しいのがマイルストーン⑤です。
「2030年までに再生利用を倍増」という目標に対し、今回の点検は2016年実績の5%を基準に、その倍の10%を目安として評価しています。2024年の再生材の国内利用率は4.6%(資料3 p.35)。倍増どころか、基準年の水準をわずかに下回っています。
ここでの再生材利用率は、(再生樹脂投入量)÷(国内樹脂製品消費量+加工ロス量)です。背景として資料が挙げるのが、2017年12月に始まった中国の廃棄物原料輸入規制です。プラスチックくずの輸出量は2010年の164万トンから2025年に54万トンまで減りましたが、その分が国内利用に回ってはいません。
マイルストーン⑥のバイオマスプラスチックも、2024年度の流通量21万トンで目標200万トンの約1割です(資料3 p.36)。増加をけん引するのは主にレジ袋・ごみ袋用途のバイオマスポリエチレンで、用途の広がりは限定的です。
補足 評価の「ものさし」は今回定められた
マイルストーン①の原文は「これまでの努力も含め累積で25%排出抑制する」で、基準年が明記されていません。今回の点検では循環型社会形成推進基本法が制定された2000年を基準に置き、容器包装等・コンテナ類の排出量が451万トンから2024年の360万トンへ減少したことをもって20.2%削減と評価しています。
これは資料が「今回の確認方法」として明示したもので、基準年の置き方で達成度の見え方は変わります。TF3では進捗評価の指標及びモニタリング手法の検討が予定されています。
4. これから何が決まるのか――3つのタスクフォース
未達の項目が明らかになったことを受け、検討の場は3つのTFに再編されます。
TF | テーマ | 座長 | 第1回 | 第2回 |
TF1 | プラスチック容器包装の持続可能設計 | 細田衛士氏(東海大学) | 2026年9月15日 | 2027年1月頃 |
TF2 | プラスチック資源徹底回収・サプライチェーンの最適化 | 大塚直氏(早稲田大学) | 2026年9月29日 | 2027年2月頃 |
TF3 | 再生プラスチック・バイオプラスチックの価値創出 | 橋本征二氏(立命館大学) | 2026年9月29日 | 2027年2月頃 |
出典:合同会議(第12回)資料4 p.3、p.5、p.7、p.9

TF1(設計)は、リサイクルの高度化とコスト抑制に向けた循環性設計を検討します。リサイクル工程や再生材の質を阻害する素材・成分・形態を明らかにし、改善方策を導く構成です。ブランドオーナー、容器包装製造事業者、業界団体へのヒアリングが予定されています。
TF2(回収)は、家庭系・事業系の分別回収量の増大とサプライチェーンの効率化・高度化が目的です。第1回では、家庭系について分別協力率実証の結果と33条認定自治体の実態調査結果が、事業系について中間処理事業者へのアンケート結果が報告されます。
TF3(価値創出)は、石油由来プラに比べ価格の高い再生プラ・バイオプラの値差を縮小する方策を整理します。温室効果ガス削減効果のクレジット化や、マスバランス方式による価値表示が検討項目です。
3つのTFすべてでヒアリングが検討プロセスに組み込まれている点は注目に値します。現場の実態が制度設計に反映される機会であり、対象となった場合に備えて自社・自団体の課題を整理しておく価値があります。
5. いま企業・自治体が着手すべきこと
再生プラ利用計画:最初の提出期限は2027年9月末
再生利用率が最も未達である以上、制度が厚くなる可能性が高いのがこの領域です。
改正資源有効利用促進法が令和8年4月に施行され、製造事業者等に再生プラスチックの利用計画策定と定期報告を求める仕組みが始まりました。
確定していること/検討中のこと [確定]計画提出:毎年度9月末日まで(2027年度から) [確定]定期報告:毎年度9月末日まで(2028年度から) [検討中]PETボトル等の取組が進んでいる製品について、令和10年度までに段階的に一定の再生プラ利用率を義務化することが検討されている
対象となる「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」は、プラスチック製容器包装(食品(指定PETボトルを除く)や医薬品等を除く)、自動車、家電4品目(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機)です。
判断基準省令は、
① 目標の設定(国産再生プラの利用に配慮)、
② 再生プラ利用促進のための技術の向上、
③ 二酸化炭素の排出量の削減、
④ 管理体制の整備(利用量・利用率の記録、事業場ごとの責任者の選任)
の4本柱です。
最初に着手すべきは④の管理体制です。自社の再生材利用量・利用率を事業場単位で把握できる状態になっていなければ、①の目標設定も②③の取組も成り立ちません。
設計認定制度:対象拡大を見据えた確認
プラ法に基づく環境配慮設計の認定制度は令和8年に運用が始まり、4分野(清涼飲料用PETボトル容器、文具、家庭用化粧品容器、家庭用洗浄剤容器)で50製品が認定されています。TF1で循環性設計が検討される以上、対象分野の拡大は想定すべきです。現行の認定基準(減量化、単一素材化・分離容易性、再生材・バイオマス利用)が、次に求められる水準を測る物差しになります。
委託先の見直し:処理側の制度も動いている
見落とされやすいのが処理側の制度変更です。令和7年11月に再資源化高度化法が全面施行され、産業廃棄物処分業の役割が「適正処理」から「再生材の供給」へ位置づけ直されました。令和8年6月には改正廃棄物処理法が公布され、スクラップヤードの規制と国内再生原則の創設が盛り込まれています。委託先の選定基準を「適正に処理してくれるか」から「再生材として戻せるか」へ広げる必要が出てきます。
自治体:32条・33条の使い分け
プラ法に基づき容器包装以外のプラ製品の分別収集を実施する市区町村は315自治体、33条の再商品化実施計画の認定を受けた市区町村は79自治体です。
33条ルートには、選別・梱包を行わず再商品化実施者へ直接搬入するケースや、リサイクルプラントを誘致して周辺市区町村と連携するケースもあります。TF2の第1回で認定自治体の実態調査結果が報告される予定で、自団体の方式を見直す材料になります。
まとめ
今回の点検で示されたのは、達成に近い目標と大きく離れた目標がはっきり分かれている事実です。未達の項目は、2027年3月に向けた検討のなかで制度強化の対象になります。
特に再生材の利用は、計画提出(2027年度)、定期報告(2028年度)、義務化検討という順で要求水準が上がります。2027年9月末の初回提出から逆算すると、2026年度のうちに自社の現在地を把握しておきたいところです。
そのとき必要になるのは、「有効利用率」ではなく「再生材利用率」で自社を測る視点です。本記事で見たとおり、この2つは似て非なるものです。
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参考資料



