モバイルバッテリー等4品目が小型家電リサイクル法の対象へ
環境省は2026年7月21日から8月20日まで、「小型家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」に対するパブリックコメントを実施しました。
この報告書案には、加熱式たばこデバイス、電子たばこデバイス、モバイルバッテリー、ポータブル電源のモバイルバッテリー等4品目を小型家電リサイクル法の対象品目に追加する方針が盛り込まれています。追加が実現すれば、これらの製品は全国約60者の認定事業者に引き渡せるようになり、リチウム蓄電池(以下「LiB」)を含む製品の処理先確保が大きく前進します。
一方で、国自身が「膨張したモバイルバッテリーの混入により発火リスクが急増するおそれ」をデメリットとして明記している点も見逃せません。
本記事では、報告書案と審議会資料をもとに、政令改正が固まる前に自治体・事業者が確認しておくべき実務ポイントを整理します。

1. 何が決まったのか ― 報告書案とパブコメの位置づけ
小型家電リサイクル法は、平成25年4月の施行から13年が経過しました。今回の評価・検討は、産業構造審議会イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 小型家電リサイクルワーキンググループと、中央環境審議会 循環型社会部会 小型家電リサイクル小委員会の合同会合で、令和7年2月から進められてきたものです。
重要なのは、この報告書自体が法令ではないという点です。報告書はあくまで提言であり、実際の制度変更は次の2本立てで行われます。第3回合同会合の資料5「報告書(案)に基づく今後の対応について」が、その内容を具体的に示しています。
(1)政令改正
対象品目への4品目追加。小型家電リサイクル法の対象品目は施行令で定められているため、追加には政令改正が必要です。
(2)基本方針(告示)改正
「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する基本方針」の改正。回収量目標を年間14万トンのまま据え置き、目標年度を令和5年度から令和11年度に改めるほか、市町村が取り組むべき事項としてステーション回収・ピックアップ回収の実施検討、認定事業者が取り組むべき事項としてプラスチック・重要鉱物の再資源化やリユースの推進などを明示するとされています。
なお、パブリックコメントは8月20日に締め切られています。現時点で読者が取り得るアクションは意見提出ではなく、政令が固まる前の実務準備です。

2. 追加されるモバイルバッテリー等4品目と、「追加されない」品目の整理
対象品目に追加が提案されているのは、次の4品目です。
加熱式たばこデバイス
電子たばこデバイス
モバイルバッテリー
ポータブル電源
小型家電リサイクル法第2条は、対象となる「小型電子機器等」の要件として、消費者が通常家庭で使用する電気機械器具であること、効率的な収集運搬が可能なこと、経済性の面における制約が著しくないことを挙げています。上記4品目はこれらの要件に該当すると判断されました。
実務上むしろ重要なのは、「追加されない」品目の整理です。第3回合同会合の資料3では、流通量が増加している小型扇風機・ワイヤレスイヤホン・PCサーバーについて、現行法の対象品目に該当すると整理されました。ただし、資料にはこれらがどの区分に当たるかまでは示されていません。
政令には具体的な製品名が列挙されておらず、対象は「デジタルオーディオプレーヤー、ステレオセットその他の電気音響機械器具」のように28の機能区分として定められています。自社や自庁で扱っている製品が対象かどうかは、製品名ではなく機能区分に照らして判断する必要があります。
「対象外だと思って別ルートで処理していた」というケースは、この機会に見直しが必要です。
なぜ電池のような製品が「小型家電」に入るのか
モバイルバッテリーやポータブル電源は、見た目には電池そのものです。これが「小型家電」になることに違和感を持つ方も多いと思います。
理由は法律の書きぶりにあります。小型家電リサイクル法第2条が対象としているのは「電気機械器具」であって、「家電製品」ではありません。要件は次の3つだけです。
消費者が通常家庭で使用する電気機械器具であること
効率的な収集運搬が可能なこと
経済性の面における制約が著しくないこと
モバイルバッテリーもポータブル電源も、中身は電池だけではありません。保護回路や充電制御、筐体、出力端子を備えた器具です。そのため資料3は、4品目を「小型家電リサイクル法に定める『小型電子機器等』に該当するものと判断される」としています。
それでも政令改正が必要なのは、法律が要件を定めるだけで、実際の対象品目は政令が28の機能区分として列挙しているからです。4品目はそのどれにも当てはまらないため、区分そのものを追加しなければなりません。
混同しやすい2つの制度 資源有効利用促進法の「指定再資源化製品」と、小型家電リサイクル法の「対象品目」は、名前が似ていても義務の向き先が異なります。 指定再資源化製品(資源有効利用促進法):製造事業者・輸入販売事業者に自主回収と再資源化を義務付ける制度。義務を負うのはメーカー側です。 対象品目(小型家電リサイクル法):認定事業者に対して当該品目の引取義務を課す制度。義務を負うのは認定事業者側です。 加熱式たばこデバイスとモバイルバッテリーは両制度の対象になりますが、電子たばこデバイスとポータブル電源は小型家電リサイクル法側のみです。社内規程や住民向け案内を作成する際は、どちらの制度に基づく説明なのかを明示しないと現場が混乱します。
3. なぜ今なのか ― 発火事故と処理先の不足
品目追加には、後述するとおり国自身が認めるデメリットがあります。それでも今回の見直しで追加に踏み込む理由は、3つの変化が同時に起きたことと、制度見直しの順番が回ってきたことに整理できます。
ものが増えた ― 4品目の販売量が増え、廃棄量も増えている。10年以上前に28品目を設定した時点では想定されていなかった製品群です。
燃えている ― 認定事業者の施設での発火が4年で6倍超。市町村の不燃ごみ処理施設やプラスチック中間処理施設でも発火が起きています。
市町村が分別を始めたのに、出し先がない ― LiB分別区分の新設を受けて約75%の市町村が回収を始めたものの、ポータブル電源などは処理事業者から引取を断られる例があります。
これに制度上の事情が重なります。小型家電リサイクル法の見直しは5年周期で、平成23年度の告示、令和2年度の初回見直しに続く2回目が今回(令和7〜8年度)です。品目追加には政令改正が必要なため、この見直しに乗せなければ、次の機会は令和12年度になります。以下、3つの変化を順に見ていきます。
(1)4品目の廃棄量が増えている
報告書案は、加熱式たばこデバイス、電子たばこデバイス、モバイルバッテリー、ポータブル電源について「製品販売量の増加に伴い廃棄量が増加している」と述べています。いずれもLiBを内蔵し、発火リスクを伴う製品です。現行の28品目はスマートフォンやノートPCなどLiB使用製品を含んでいますが、これら4品目は制度の外側で増え続けてきました。
(2)認定事業者の施設で発火が急増している
小型家電リサイクル協会のアンケート調査によると、認定事業者における発火(出火あり)は2024年度に312件発生しました。2020年度50件、2021年度60件、2022年度87件、2023年度181件と推移しており、4年間で6倍を超えています。出火に至らない事象を含めると、2024年度の発煙・発火事象は合計4,348件(火花の発生2,050件、煙の発生1,871件、出火し自力で消火304件、出火し消防隊により消火8件、その他114件)にのぼります。

ここで押さえておきたいのは、発火リスクは「追加すれば生じる」ものではなく、すでに存在しているという点です。4品目は現在も家庭から排出され、不燃ごみや小型家電回収ボックスに混入し、どこかの施設で燃えています。問題は、そのリスクを誰がどのルートで引き受けるかにあります。
(3)分別しても引渡し先がない
令和6年度末に一般廃棄物処理システムの指針が改訂され、LiBおよびLiB使用製品が分別収集区分として新設されました。さらに令和7年4月15日には「市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策について」(環循適発第2504151号)が発出され、全市町村を対象とした説明会も実施されています。
その結果、令和5年度実績で約75%の市町村がLiBまたはLiB使用製品を何らかの形で回収するようになりました(電池・製品の両方回収63.6%、電池のみ4.9%、製品のみ6.9%)。
一方で、LiB等の回収を行わない、または一部しか行わない理由として、「近隣に引き取りが可能な事業者又はその他適正な者がいない」を2割超の市町村が挙げています(LiB 21.0%、LiB使用製品 23.2%)。自治体ヒアリングでも、ポータブル電源について「まだ処理先が決まっていない」「処理会社より引取不可とされている」という声が複数寄せられました。分別収集の区分は整備されたものの、その先の引渡し先が確保できていない。4品目追加は、この構造的なボトルネックを解消する施策として位置づけられています。
4. 品目追加のメリットと、国自身が挙げたデメリット
第3回合同会合の資料3は、品目追加の判断を「追加する場合」「追加しない場合」それぞれのメリット・デメリットとして4象限で整理しています。行政資料としては珍しく、追加する側のデメリットも具体的に書かれています。以下は資料3の整理をそのまま4象限に並べたものです。
追加する場合 | 追加しない場合 | |
メリット |
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デメリット |
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この表から読み取れる国の論理は次のとおりです。発火リスクはすでに存在している。追加すれば、そのリスクの一部は小型家電回収ボックス側に移る。しかし認定事業者は国の認定審査・立入検査・設備補助の対象であり、管理できるルートに集める方が、自治体が個別に処理先を探し、資源が海外に流出する現状よりよい。 追加しない場合の「混乱しない」「発火が増えない」というメリットは、裏を返せば現状のリスクを放置することでもあります。
なお、LiB等の分別収集を始めた9自治体へのヒアリングでは、「引渡し先の選択肢が広がる」として品目追加におおむね肯定的な回答が得られた一方、回収ボックスの運用については「小電回収ボックスで回収するようにするかは検討が必要」という留保も付いています。報告書案が「周知は慎重に」と繰り返すのは、この点を踏まえたものです。
分別収集区分と引渡し先は別の概念
一般廃棄物処理システムの指針が定める「LiBおよびLiB使用製品」の区分は自治体による分別収集の区分であり、事業者に引き渡す際の区分ではありません。したがって、この区分で収集したものであっても、小型家電リサイクル制度の対象品目であれば認定事業者に引き渡すことができます。品目追加は住民の出し方を変えるものではなく、自治体側の引渡し先の選択肢を増やすものです。

5. 政令改正までに準備すべきこと
政令改正の時期は未定ですが、施行後に慌てないための準備は今から進められます。立場別に整理します。
自治体の廃棄物・環境部門
回収ボックスの運用方針を先に決める。 4品目を既存の小型家電回収ボックスに受け入れるのか、LiB専用の回収区分で受け続けるのかは、自治体の判断に委ねられます。国自身が「膨張したモバイルバッテリーの混入による発火リスク急増」をデメリットとして挙げている以上、既存ボックスへの一律受入れは慎重に検討すべきです。設置先(公共施設、小売店等)との事前調整も必要になります。
引渡し先の再確認。 現在LiB使用製品をどこに引き渡しているか、品目追加後に認定事業者ルートへ切り替えるメリットがあるかを、収集運搬・処分の許可要否も含めて確認しておきます。
住民周知の設計。 すでにLiB分別を開始している自治体では、住民への説明が二転三転するリスクがあります。品目追加はあくまで「引渡し先の選択肢が増える」ものであり、住民の出し方が必ず変わるわけではない、という整理を先に固めておくことが有効です。
回収方法の見直し。 基本方針改正では、ボックス回収に加えてステーション回収やピックアップ回収の実施検討が市町村の取組事項として明示される見込みです。1人当たり年間回収量が1kg以上の391市町村のうち約78%がステーション回収またはピックアップ回収を実施している一方、ボックス回収を実施する615市町村のうち482市町村(約78%)は0.1kg未満にとどまっています。
企業の環境部門(排出事業者)
社内の退蔵品を棚卸しする。 モバイルバッテリー、ポータブル電源、加熱式たばこデバイスは、事業所内に退蔵されやすい製品です。膨張・変形した電池は時間が経つほど危険度が増すため、品目追加を待たずに処理先を確保すべきです。
処理ルートの再設計。 事業系の使用済小型家電は、認定事業者の直接回収ルートを利用できます。令和6年度の直接回収33,030トンのうち、事業所からの回収は4,646トンでした。産業廃棄物ルートで処理している小型家電について、認定事業者ルートへの切り替え可否を検討する価値があります。
保管場所の火災リスク評価。 排出までの一時保管中に発火する事例が報告されています。保管場所、保管容器、保管期間、周囲の可燃物の有無を点検してください。
制度側の動きを注視する。 資料3の論点整理には「産廃系小型家電の回収強化」が挙げられ、運送事業者等のDX活用によるトレーサビリティ確保やマニフェストの扱いが検討課題とされています。事業系ルートの取扱いは今後さらに動く可能性があります。
おわりに
小型家電の回収量は令和6年度で87,363トンと、目標の14万トンに届いていません。制度の実効性はもはや「どれだけ集めるか」だけでなく、「集めたものを安全に、確実に処理先へつなげられるか」で問われています。
4品目追加は回収量対策であると同時に安全対策ですが、新たな発火リスクを国自身が認めている以上、受け入れ側の運用設計を伴わなければ効果は限定的です。政令が公布されてから考えるのではなく、いま準備を始めることをお勧めします。



