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第五次循環基本計画の点検 ー 資源生産性「倍増」の真実(前編)ー

11 分前
読了時間: 10分

2026年9月17日、環境省は「第五次循環型社会形成推進基本計画」(2024年8月閣議決定)の進捗状況について、中央環境審議会循環型社会部会による第1回点検の結果を公表しました。


公式の評価は、資源の流れを示す6つの物質フロー指標のうち、目標の「達成見込み」は最終処分量だけで、残る5指標は「注意が必要」というものです。報告書は、行いやすい取組はすでに進み、近年の進捗は総じて緩やかになっていると総括しています。


ただ、72ページの報告書を数字から分解していくと、見出しとは少し違う実像が見えてきます。日本の循環指標の「改善」は、資源を「回した」成果というより、資源を「使う量」が減ったことに支えられている面が大きいのです。


前編では、国全体の数字を「率」ではなく「量」で読み直します。

後編では、重点点検分野の結果から、企業と自治体の次の一手を考えます。(10/5予定)


資源生産性の「倍増」の真実
資源生産性の「倍増」の真実


1. 第五次循環基本計画の点検のスコアカード


循環型社会形成推進基本計画は、循環型社会形成推進基本法に基づく国の基本計画です。第五次計画は循環経済への移行を国家戦略と位置づけており、2年に1回程度、中央環境審議会が進捗を点検します。今回はその初回で、原則として2026年3月30日時点で得られたデータを中心に使っています。


点検の物差しは10の代表指標です。

資源の「入口」「循環」「出口」を測る物質フロー指標が6つ、国・事業者・国民の取組の進み具合を測る取組指標が4つで構成されています。


主な指標の到達点は次のとおりです。


表1 主な代表指標の進捗(第1回点検)

指標

最新値

目標

判定

数字の裏側(筆者)

資源生産性

50.9万円/t

(2023年度)

60万円/t

(2030年度)

注意が必要

伸びの主因は分母(天然資源の投入量)の縮小

一人当たり天然資源消費量

12.1t/人・年

(2021年度)

11t/人・年

(2030年度)

注意が必要

最新値が2021年度で、データの遅れが大きい

再生可能資源及び循環資源の投入割合

30.1%

(2023年度)

34%

(2030年度)

注意が必要

2020年度以降のペースでのみ到達

入口側の循環利用率

17.0%

(2023年度)

19%

(2030年度)

注意が必要

上昇の大半は分母の縮小による

出口側の循環利用率

43.6%

(2023年度)

44%

(2030年度)

注意が必要

2013年度の46.1%がピーク

最終処分量

1,199万t

(2023年度)

1,100万t

(2030年度)

達成見込み

2000年度比で約8割削減

循環型社会ビジネスの市場規模

70.6兆円

(2023年度)

80兆円以上

(2030年度)

達成見込み

金融危機の影響を除外して判定

グリーン購入の意識

69.7%

(2025年度)

90%

(2030年度)

更なる取組が必要

再生原料の製品を積極的に買う人は7.3%

出典:点検報告書 表II-1をもとに作成。数値の「約」は省略。「数字の裏側」欄は筆者による整理


数字だけを見れば、「最終処分は順調、資源循環は伸び悩み」という評価です。

では、「順調」に見える数字の中身はどうなっているのでしょうか。

まず資源生産性から分解してみます。



2. 資源生産性「倍増」の真実


資源生産性は、GDPを天然資源等投入量で割った値で、少ない資源でどれだけ経済的な価値を生み出せたかを示します。2000年度の25.3万円/tから、2023年度には50.9万円/tへとほぼ倍増しました。


ところが分子と分母に分けると、印象が変わります。2000年度を1とすると、2023年度の実質GDPは1.14倍にとどまる一方、天然資源等投入量は0.57倍まで減っています。倍増の主因は、分子の成長ではなく分母の縮小です。


では、何が減ったのでしょうか。天然資源等投入量は、2000年度の1,921百万tから2023年度の1,092百万tへ、829百万t減りました。


その内訳が図1です。


図1_天然資源等投入量の減少内訳
図1_天然資源等投入量の減少内訳

減少分の約8割、660百万tを占めるのが、国内で採取される非金属鉱物です。砕石・砂利・石灰石など、主に建設やセメントに使われる資材にあたります。同じ期間に、建物やインフラ、機械などとして社会に蓄積される量(蓄積純増)も1,072百万tから375百万tへ大きく減っています。資源生産性の改善には、建設需要の縮小が大きく影響していると読めます。


試しに、国内の非金属鉱物の投入量が2000年度の水準のままだったと仮定すると、2023年度の資源生産性は約31.6万円/tとなり、伸びは約1.25倍にとどまります。


もちろん、使う資源が減ること自体は、循環型社会が目指す方向です。ただ、この数字をそのまま「資源循環が進んだ成果」と受け取るのは、少し慎重になる必要があるかもしれません。直近の2023年度も、天然資源等投入量は前年度から約76百万t減りましたが、主な内訳は、輸入の化石系資源の減少(約33百万t)と国内の非金属鉱物の減少(約29百万t)でした。



3. 「回す量」は横ばい


資源を「回す」側はどうでしょうか。廃棄物などを再使用・再生利用した循環利用量は、2000年度の213百万tに対して、2023年度は224百万tです。23年間で5%しか増えておらず、2010年度の246百万tと比べるとむしろ減っています。


一方で、循環利用の「率」は上がっています。天然資源と循環資源を合わせた投入量に占める循環利用量の割合(入口側の循環利用率)は、10.0%から17.0%へ上昇しました。量がほとんど増えていないのに率が上がったのは、分母の天然資源等投入量が大きく減ったためです。


図2_循環利用の率と量
図2_循環利用の率と量

分母が2000年度のままだったと仮定すると、2023年度の入口側の循環利用率は約10.4%です。7ポイントの上昇のうち、循環利用量の増加で説明できるのは1割程度にすぎません。


廃棄物等の発生量に占める循環利用量の割合(出口側の循環利用率)は、さらに厳しい状況です。2013年度の約46.1%をピークに横ばいから減少傾向にあり、2023年度は約43.6%でした。2030年度の目標は約44%で、10年前にすでに達成していた水準より低く設定されています。



残っているのは「再資源化しにくい」もの

素材別に見ると、出口側の循環利用率は、金属系が約97.2%、非金属鉱物系が約73.7%、化石系が約49.5%である一方、バイオマス系は約16.9%にとどまります。バイオマス系には、家畜のふん尿や稲わら、紙、食品廃棄物、木くずなどが含まれます。これらは水分が多く発生場所も分散しているため、集めて再生利用するコストが見合いにくいのが実情です。


金属のように再資源化しやすいものはすでに回っており、残っているのは、水分が多い、発生場所が分散している、集めても採算が合いにくいといった「再資源化しにくい」ものです。報告書の「行いやすい取組は既に進展」という総括は、この構造を映していると読めます。


■ 「注意が必要」の本当の意味

目標の達成見込みは、2000年度以降の長期傾向、2015年度からの中期傾向、2020年度からの短期傾向の3つで判定されます。3つとも届けば「達成見込み」、いずれかで届かなければ「注意が必要」、どれでも届かなければ「更なる取組が必要」です。

報告書全体で「注意が必要」とされた7指標のうち6指標は、2015年度からの中期傾向では目標に届きません。

また、2020年度以降の短期傾向にはコロナ禍からの回復の影響が含まれうることを、報告書自身が入口側・出口側の循環利用率について注記しています。「注意が必要」は、実務上は「このままのペースでは届かない可能性が高い」と受け止めておくのが安全です。



4. お金とモノのずれ、測れていない脱炭素効果 ー 市場は5割増、モノは5%増 ー


取組指標のうち、循環型社会ビジネスの市場規模は、2000年度の約46.8兆円から2023年度の約70.6兆円へと5割以上拡大し、「達成見込み」と判定されました。伸びが大きいのは「循環利用・再生利用」と、リフォーム・リペアやリース・レンタルを含む「長期使用・有効利用」の分野です。


金額と重量は単位が異なり、価格の変動や高付加価値化の影響も含むため、単純には比べられません。それでも、市場が5割以上伸びた同じ期間に循環利用量が5%しか増えていないという事実は、「市場の拡大」がそのまま「資源の循環量の拡大」を意味しないことを示しています。なお、この指標は2000年度からの傾向では目標に届かないものの、世界的金融危機の影響を踏まえて「達成見込み」と判断されたものです。



「再生品を選ぶ」人は1割未満

需要側の後押しも弱いままです。2025年度の国民アンケートでは、環境にやさしい製品等の購入を心がけている人は69.7%で、2030年度の目標90%に届いていません。具体的な行動を見ると、「再生原料で製造されたリサイクル製品の積極的な購入」は7.3%、「ビールびんや牛乳びんなど再使用可能な容器の利用」は6.8%でした。


家庭ごみの分別回収(77.4%)のように制度で規定・推進されている行動の実施率は高い一方、自分で選ぶ行動になると一気に低くなります。再生材の需要を消費者の自発的な選択だけに頼るのは難しく、企業間の取引や公共調達をどう動かすかが鍵になります。



「循環 × 脱炭素」の効果は、国もまだ測れていない

脱炭素との関係も見ておきます。廃棄物部門の温室効果ガス排出量は、1997年度の44.4百万t-CO2をピークに2023年度は33.2百万t-CO2まで減りましたが、2010年度以降はほぼ横ばいです。その大半は、廃棄物の原燃料利用と焼却に伴う排出です。


廃棄物を燃料や発電に使うことで他部門の排出を減らした効果は、2022年度で約20.4百万t-CO2と2000年度の約2.6倍になりましたが、これも2015年度頃から横ばいです。そして報告書は、循環経済の取組による温室効果ガスの削減効果を定量化することは「課題」だと明記しています。


資源循環が脱炭素にどれだけ効果があるかは、国の統計でもまだ見えていません。企業のScope3(サプライチェーン排出量)や自治体の地球温暖化対策実行計画で資源循環の効果を示したいなら、自ら算定する必要があります。



5. なぜ今、「量」で読み直すのか


この点検結果をいま読み解いておくべき理由は、3つあります。


政策の物差しが「ごみ」から「資源確保」へ

2026年は、循環経済が経済・安全保障政策の柱として明確に位置づけられた年です。4月21日には循環経済に関する関係閣僚会議が「循環経済行動計画」を取りまとめ、再生資源の供給サプライチェーンの強靱化や、日本をハブとする国際資源循環ネットワークの構築などを柱に、2030年までに官民で約1兆円の投資を目指すとしました。7月に閣議決定された骨太方針2026は、経済安全保障の強化の項目で、資源循環等へ支援対象を拡大し、経済合理性に委ねると安定供給の確保が難しい領域については国による更なる支援の方策を検討すると明記しています。


同じ4月には改正資源有効利用促進法が施行され、自動車・家電4品目・容器包装の製造事業者等に、再生プラスチックの利用計画の提出と定期報告を求める仕組みが動き出しました。これからは「どれだけ減らしたか」だけでなく、「どれだけ回し、国内で確保できたか」が問われます。



国の数字は2〜5年遅れて届く

今回の点検に使われたデータの多くは2023年度の値で、一人当たり天然資源消費量は2021年度の値です。2026年の政策転換の効果が点検の数字に表れるのは、早くても数年先になります。部会でも、取組の「質」をどう評価するか、プラスチックや重要鉱物の国内循環や海外流出をどう定量的に把握するかが課題として挙がっており、指標そのものが見直されていく可能性があります。



点検結果は次の計画の前提になる

今回の結果は、2026年度に行われる第六次環境基本計画の点検に、循環型社会分野の情報としてインプットされる予定です。次の制度検討の前提になる数字だということです。



自組織で試したい3つの点検

国の数字で起きていることは、企業や自治体の数字でも起きています。


  • リサイクル率や再生材利用率を「率」と「量」の両方で追い、排出量や生産量の減少による分母効果を切り分ける

  • 焼却量や資源化量の変化を「総量の変化」と「処理の仕方の変化」に分けて見る(報告書は一般廃棄物でこの分解を行っており、後編で紹介します)

  • 資源循環による温室効果ガスの削減効果を、自ら算定できる状態にしておく



まとめ


第五次循環基本計画の点検の数字は、日本の資源循環が「使う量・捨てる量を減らす」段階では大きな成果を上げてきた一方、「回す量を増やす」段階では足踏みしていることを示しています。行いやすい取組が一巡したいま問われているのは、回しにくい資源をどう回し、再生資源をどう確保するかです。そのとき必要になるのは、「率」だけでなく「量」で自組織を測る視点です。



■ 後編のお知らせ

後編「再生材は『確保する時代』へ」では、重点点検分野の結果から、企業にとっての再生材の需給ギャップと、自治体で上がっている「燃やす割合」、2027年度末が期限の長期広域化・集約化計画を取り上げます。10/5公開予定です。


■ CYCLETANKの脱炭素化支援

CYCLETANK合同会社では、廃棄物・資源循環のデータ整理から、資源循環による温室効果ガス削減効果の算定、企業の脱炭素計画や自治体の実行計画への反映までをご支援しています。「自社のリサイクル率が本当に改善しているのか確かめたい」「資源循環の取組をScope3や実行計画に反映したい」という段階から、お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら:https://www.cycle-tank.com/contact



参考資料


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