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省エネ法の特定荷主に評価制度(案) ― 物流効率化法の“ 特定荷主 ”とは別物

17 時間前
読了時間: 13分

経済産業省(資源エネルギー庁)は、2026年10月2日の第12回荷主判断基準ワーキンググループ(WG)で、省エネ法の特定荷主に「定期報告書の開示制度」と「事業者クラス分け評価制度」を導入する案を示しました。

評価でSクラスとなった事業者は、社名が公表されます。まだ提案の段階で、詳細は12月に予定される次回のWGで議論されます。


環境部門にとって見逃せないのは、自社が出す産業廃棄物の輸送も「荷主としての輸送」に数えられることです。なお、物流効率化法にも同じ「特定荷主」という言葉がありますが、別の制度です。両者の違いは、最後の章で解説します。


省エネ法と物流効率化法の違い
省エネ法と物流効率化法の違い

1. そもそも「省エネ法の特定荷主」とは


省エネ法は、工場だけでなく、貨物を運ばせる「荷主」にも省エネを求めています。ここでいう荷主は、輸送事業者に貨物を継続して運ばせる事業者と、契約などで輸送の方法等を実質的に決めている事業者です。自社のトラックで運ぶ分(自家輸送)も算定に含まれます。


このうち、年度の輸送量(貨物の重さ×距離)が3,000万トンキロ以上の荷主が「特定荷主」です。3,000万トンキロは、年10万トンの貨物を平均300km運ぶくらいの量です。新たにこの規模になった荷主は「貨物の輸送量届出書」を提出し、特定荷主に指定されます。指定されると、中長期計画と定期報告を毎年6月末日までに国に提出します。


2026年6月末時点の指定数は794社です。

業種別に見ると、化学工業(104社)、卸売業(97社)、食料品製造業(93社)、窯業・土石製品製造業(61社)、鉄鋼業(54社)、輸送用機械器具製造業(49社)などが多く、製造業が中心です。製造業の多くは、化学なら廃酸や汚泥、食品なら動植物性残さ、鉄鋼なら鉱さいやばいじんといった、産業廃棄物の排出事業者でもあります。


一方、荷主の定義からは、貨物の輸送の事業そのものが除かれています。物流会社などの輸送事業者は荷主とは別の枠組みで規制され、トラック200台以上などの大規模な事業者が「特定貨物輸送事業者」です。つまり今回の評価制度案は、物流会社ではなく、運送を発注し、輸送の方法を決める側である荷主を評価するものです。



2. 何が提案されたのか ― 開示制度とクラス分け評価


特定荷主には、輸送に使うエネルギーを売上高や物流量などで割った「エネルギー消費原単位」を、中長期的にみて年平均1%以上下げることが目安として求められています。


今回の案は、工場等の規制で使われてきた2つの仕組みを、荷主制度にも導入するものです。どちらも特定荷主が対象です。


表1 提案された2つの仕組み

仕組み

案の内容

対象

工場等での運用

定期報告書の開示制度

開示を宣言した特定荷主の中長期計画書・定期報告書の情報を公開する。非開示項目の設定を含め工場等と同じ設計とし、開示項目は業界団体等との意見交換で決める

任意(開示を宣言した特定荷主のみ)

2023年度に導入

事業者クラス分け評価制度

定期報告の内容で全特定荷主をクラス分けし、Sクラスの事業者名を公表する。新たなデータは求めず、今の定期報告書の情報だけで評価する

定期報告を提出するすべての特定荷主

2016年度に導入。直近はSクラスが54.1%


法令で「公表」というと、不名誉な意味を思い浮かべるかもしれません。実際、省エネ法にも、取組が著しく不十分な特定荷主に勧告を行い、公表や命令へと進む規定があります。今回のSクラスの社名公表はその逆で、優良な事業者として名前を出す、いわば「褒める公表」です。工場等のクラス分けでも、Sクラスは「省エネが優良な事業者」とされ、経済産業省のウェブサイトで事業者名や連続達成年数が表示されています。


図1_S評価の判定フロー
図1_S評価の判定フロー

S評価のルートは2つあります。


  • ルート①(絶対評価):5年度間平均の原単位変化が99以下(年1%以上の低減)

  • ルート②(相対評価):①には届かないが100未満(低減している)で、同じ業種(中分類)の中で低減率が上位20%以内


ルート②は、重量物や特殊品を運ぶ石油・鉄鋼・化学、少量多品種の卸売・小売など、1%低減の達成状況が芳しくない業種への配慮として加えられました。


注意したいのは、S以外が「評価対象外」と表記される点です。評価の対象にならないという意味ではなく、全社を評価した結果、Sに当たらなかったという意味です。工場等のようなA・B・Cの区分は今回の案にはなく、「評価区分を細分化しすぎない」との考え方から、当面は優良な事業者を明確に評価する構成としています。


■ 具体例:「年1%以上の低減」とは

判定に使う「5年度間平均の原単位変化」は、直近5年度の前年度比(4回分)を年平均にならした値です。たとえば、売上高1億円あたりの輸送エネルギー(原油換算)が2019年度に1.00kl、2023年度に0.96klだったとします。4年間で4%の低減で、年平均にならすと約1%の低減(原単位変化98.98)なので、ルート①を満たします。2023年度が0.97klなら原単位変化は99.24で、ルート①には届きません。この場合は、同じ業種の中で低減率が上位20%以内なら、ルート②でSになります。

なお、原単位は総量ではありません。売上が10%増えた年に輸送エネルギーの増加が6%にとどまれば、総量は増えていても原単位は約3.6%改善します。


制度の詳細設計は12月予定の第13回WGで議論され、導入時期はまだ示されていません。


なぜ今、荷主に評価制度なのか

特定荷主の原単位は、改善はしているものの年1%に届かない状態が長く続き、直近の2019〜2023年度の5年度間平均で、ようやく年1%以上の低減に届きました(単純平均98.9、加重平均98.5)。資料は背景に、GX・カーボンニュートラルに向けた対策と、物流の「2024年問題」をきっかけとした荷主の行動変容や商慣行の見直しを挙げています。サステナビリティ開示も追い風です。SSBJ基準の適用でScope3(サプライチェーン排出量)の開示が進めば、調達・輸送を担う非上場・中小の取引先にも、算定データの提供や削減の要請が広がるとみています。


図2_原単位の推移
図2_原単位の推移

■ CYCLETANKの見方:原単位は「分母」で見え方が変わる

荷主の原単位の分母は、トンキロ・重量・金額など各社が任意に選んでおり、エネルギー使用量の算定方法も燃料法・燃費法・トンキロ法が混在しています。評価案も、会社間の比較ではなく「自社内での変化」を基本にしています。金額(売上高など)を分母にしている場合、物価の上昇で原単位が実力以上に改善して見えることがあります。Q&Aも、売上高や輸送コストを分母にする場合は物価指数等で補正できるとしています。S評価を意識するなら、まず分母が自社の実態を映しているかを点検しておきたいところです。



3. 自社の廃棄物の運搬も「荷主の輸送」に入る


ここでいう荷主は、廃棄物を出して運搬を委託する排出事業者、つまり皆さんの会社です。運ぶ収集運搬業者や、受け取る処理業者ではありません。資源エネルギー庁の「省エネ法にかかるQ&A【荷主編】」は、廃棄物処理法の「排出者責任」の考え方を重視し、産業廃棄物の輸送を排出事業者の算定範囲に含めています。


表2 廃棄物輸送の算定の考え方(省エネ法)

項目

整理

産業廃棄物

排出事業者の算定範囲に含める。輸送量は廃棄物マニフェストをもとに把握する

有償で引き渡す場合

輸送費が売却代金を上回るなど引渡し側に経済的損失があれば、産業廃棄物として排出者が算定する。そうでなければ有価物として通常の貨物と同じ扱い

事業系一般廃棄物

排出した事業者が、把握できる範囲で算定する

把握する範囲

原則は最終処分場まで。少なくとも一次運搬先までは把握し、二次マニフェスト以降で算定が難しい区間は除外できる

自社トラックでの運搬

自家輸送も算定範囲。法人単位で、物流子会社の輸送は含まない

小さい輸送

トンキロで全体の1%未満なら、簡易な把握や省略ができる。毎年確認し、定期報告書に明記する


Q&Aは、中長期計画書の作成責任者の例として、物流部門の責任者と並んで「環境部門の責任者」を挙げています。廃棄物の委託契約やマニフェストは、環境部門が管理していることが多いでしょう。製品輸送のデータだけで算定していると、廃棄物の分が抜け落ちているかもしれません。ただし、重みは会社によって大きく異なります。まずは、荷主としての輸送量に占める廃棄物輸送の比率を測ることから始めましょう。


廃棄物の運搬量(トンキロ)の測り方

重さ:

マニフェストの数量を使います。容積(m³)で記録している場合は、換算係数で重量に直します。係数は、できるだけ廃棄物の種類や実態に合わせて設定します

距離:

排出事業場から運搬先までの距離です。運搬先の所在地はマニフェストで分かるので、地図の経路検索などで道路距離を測るのが手軽です。正確に把握できない場合は、代表的な発地点と着地点の距離、それも難しければ都道府県所在地点間の距離などを「みなし値」として使えます

計算:

重さ×距離がトンキロです。エネルギー使用量は、トンキロに車の大きさ(最大積載量)や積載率に応じた原単位を掛けて推計できます(トンキロ法)。委託先から走行距離や燃料使用量などのデータをもらえれば、より精度の高い燃費法・燃料法に切り替えられます


データ提供の依頼に法的な拘束力はありませんが、Q&Aは、特定輸送事業者かどうかに関わらず、輸送事業者に荷主の取組への協力を求めています(過大な負担にならない配慮も求めています)。運搬量そのものを減らすには、保管基準の範囲で排出をまとめて積載率を上げる、収集頻度や車格を見直す、委託先の処理施設の立地と運搬ルートを点検する、といった方法があります。


■ CYCLETANKの見方:再資源化との兼ね合いに注意

遠くの再資源化先に回すほどトンキロは増え、原単位は悪化します。Q&Aは、リサイクルで輸送距離が延びて増エネルギーとなる事情を、定期報告書第6表に記載するよう求めています。ただ、今回の評価案ではS判定は数値だけで決まるため、第6表に事情を書いても判定は変わりません。12月の詳細設計で手当てされるかに注目しています。当面は、ルート変更の経緯と、それによる再資源化量の変化を記録しておくのが得策です。



4. 今、確認しておきたいこと(省エネ法の特定荷主として)


ここまでの内容を、省エネ法の特定荷主として確認しておきたい項目にまとめました。物流効率化法について確認することは、次の章で取り上げます。


表3 確認チェックリスト(省エネ法)

#

確認すること

見る資料

主な担当

1

自社は省エネ法の特定荷主か(年度の輸送量が3,000万トンキロ以上か)

輸送実績、定期報告書

物流部門・環境部門

2

廃棄物の運搬を算定に含めているか。荷主としての輸送量に占める比率(トンキロ)はどれくらいか

マニフェスト、委託契約、定期報告書

環境部門

3

5年度間平均原単位の推移と、S評価までの距離(99以下か、100未満か)

定期報告書

物流部門・環境部門

4

原単位の分母が実態を映しているか(金額を分母にしている場合は物価の影響)

定期報告書

物流部門・経営企画

5

再資源化ルートの変更で距離が延びた区間を記録しているか(定期報告書第6表で説明できるか)

委託契約、マニフェスト

環境部門



5. 名前が同じ「物流効率化法の特定荷主」との違い


物流効率化法では、特定荷主などへの規制が2026年4月1日に施行され、2026年度に初めて特定荷主が指定されました。名前は同じ「特定荷主」でも、ねらいも、荷主になる者も、指定の基準も異なります。社内で「特定荷主」という言葉を聞いたら、どちらの法律の話かをまず確かめてください。


表4 省エネ法の特定荷主と物流効率化法の特定荷主

項目

省エネ法

物流効率化法

ねらい

輸送のエネルギー使用の合理化と非化石転換

トラック運転者の荷待ち・荷役等時間の短縮と、積載効率の向上

荷主になる者

輸送事業者に貨物を継続して運ばせる者、または契約などで輸送の方法等を実質的に決める者

第一種=トラック事業者と運送契約を結ぶ者/第二種=契約は結ばずに運転者と貨物を受け渡す者

受け取る側

荷主ではない(受取の日時・場所を指示できる事業者は「準荷主」)

契約せずに運転者から貨物を受け取る者は第二種荷主

対象となる輸送

トラック・鉄道・船舶・航空。自家輸送(自社トラックなど)も算定範囲

トラックのみ

指定の基準

年度の貨物輸送量3,000万トンキロ以上(重さ×距離)

前年度の取扱貨物重量9万トン以上(第一種・第二種それぞれで判定)

規模

794社(2026年6月末時点)

荷主等で上位3,200社程度を想定

指定の手続き

新たに基準以上になったら「貨物の輸送量届出書」を提出

前年度の実績が基準以上なら、5月末までに届出(届け出ない・虚偽の届出は50万円以下の罰金)

主な義務

中長期計画と定期報告(いずれも毎年6月末日まで)。行わない場合や虚偽の届出は50万円以下の罰金

物流統括管理者(CLO)の選任(選任しないと100万円以下の罰金)、中長期計画(初回は指定年度の7月末まで。2026年度のみ10月末まで)、定期報告(指定の翌年度から毎年度7月末まで)

評価・公表

Sクラスの社名を公表する案(12月に詳細設計)

優良事業者を評価・公表(2027年度以降の予定)

 

取組が著しく不十分な場合に、勧告・公表・命令へと進む仕組みがある点は、2つの法律に共通です。

違いが際立つのが、廃棄物の扱いです。国の「物流パターンごとの荷主の考え方」は、廃棄物の運搬についての考え方を示しています。


省エネ法:

産業廃棄物の輸送は、排出事業者が荷主として算定します。自社トラックで運ぶ場合(自家輸送)も算定範囲に入ります

物流効率化法:

委託先が貨物自動車運送事業の許可(廃棄物処理法の収集運搬業の許可とは別)を持つ収集運搬業者なら、排出事業者は第一種荷主です。許可を持たない(または分からない)業者への委託なら、第二種荷主です。廃棄物を受け取る処理施設は第二種荷主になります。排出事業者が自社の従業員とトラックで運ぶ場合は、第一種荷主はおらず、受け取る側が第二種荷主です


つまり物流効率化法では、廃棄物を「受け取る側」も荷主になります。実際、公表されている指定事業者の一覧(2026年8月27日時点)では、特定第二種荷主に廃棄物処理・リサイクル事業者が多く含まれ、地方公共団体も載っています。


図3_2つの法律での荷主
図3_2つの法律での荷主


評価の仕組みも異なります。物流効率化法では、定期報告や希望する荷主の報告を評価し、優良事業者を公表する制度が2027年度以降に予定されています。あわせて、物流事業者へのアンケートで荷主等の取組状況を把握し、点数の高い者だけでなく低い者も含めて公表する方針も示されています(低い者の公表を検討する際は、ヒアリング等で実態を把握するとしています)。Sクラスだけを公表する省エネ法の案とは、ここが異なります。


物流効率化法について確認すること

  • 自社は物流効率化法の特定荷主か(第一種・第二種それぞれで、前年度の取扱貨物重量が9万トン以上か)

  • 廃棄物の委託先は、貨物自動車運送事業の許可を持っているか(自社が第一種荷主か第二種荷主かが変わります)


委託契約やマニフェストは、2つの法律の両方で使う基礎データです。環境部門と物流部門(CLO)で共有しておくと、二重の作業を避けられます。

12月の第13回WGで詳細設計が示されたら、続報をお届けしたいと思います。

■ 廃棄物の委託契約とマニフェスト、点検しませんか

省エネ法では、マニフェストが廃棄物の輸送量を把握する基本の資料です。物流効率化法では、委託先が貨物自動車運送事業の許可を持つかどうかで、自社が第一種荷主か第二種荷主かが変わります。CYCLETANKは、廃棄物の委託契約やマニフェスト管理の点検を通じて、2つの法律での自社の位置づけの整理をお手伝いします。


出典

  1. 資源エネルギー庁「荷主制度に係る省エネ・非化石転換の現状及び今後の制度のあり方について」第12回荷主判断基準WG 事務局資料(2026年10月2日)(会議ページ)

  2. 資源エネルギー庁「ベンチマーク制度等の導入検討と改正省エネ法を踏まえた荷主制度の対応」第8回荷主判断基準WG 資料1(2022年6月24日)

  3. 資源エネルギー庁「省エネ法にかかるQ&A【荷主編】」(2021年3月31日)

  4. 国土交通省・経済産業省・農林水産省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「特定事業者の指定」

  5. 「物流パターンごとの荷主の考え方」(令和8年5月)

  6. 経済産業省「『物流効率化法』対応の手引書 特定荷主編」第1.1版(2026年4月)

  7. 特定第一種荷主・特定第二種荷主の指定事業者一覧(2026年8月27日時点)

    https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/002019442.pdf

    https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/002019443.pdf

  8. 資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法の手引き 荷主編 ―令和8年度改訂版―」

  9. 国土交通省・経済産業省・農林水産省「改正物効法に基づく特定事業者の対応について」(2025年9月17日、18日)

  10. 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「特定荷主の義務内容」

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