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リチウムイオン電池の廃棄ルールが変わる ― 委託契約書・マニフェスト・保管の新基準(2027年4月施行予定)【排出事業者編】

11 分前
読了時間: 11分

11月は、環境省が定める「リチウムイオン電池による火災防止月間」です。11月2日からは、アニメ『ちびまる子ちゃん』とのコラボによる啓発も始まりました。


環境省は今、リチウムイオン電池(以下、LiB)を含む廃棄物の扱い方を法令で定めようとしています。2026年10月に廃棄物処理法の施行令の改正案、11月に施行規則の改正案が公表され、いずれも意見募集が行われています。施行は2027年4月1日の予定です。


企業の環境部門にとっては、委託契約書やマニフェストの書き方、社内での保管方法まで見直しが必要になる改正です。


この記事では、排出事業者が押さえるべきポイントと、施行までにやっておきたいことを整理します。



リチウムイオン電池廃棄の新ルール
リチウムイオン電池廃棄の新ルール


1. 何が変わるのか ― LiBが「個別ルール」の対象に


政令案と省令案の2本立て

今回の改正は、2つの改正案がセットになっています。


政令案(施行令の改正)

省令案(施行規則の改正)

役割

ルールの本体

書類・手続きの整備

主な内容

LiBを含む廃棄物の収集運搬・積替保管の基準を新設

委託契約書・マニフェスト・帳簿・許可申請などに「LiBを含む」旨の記載を追加

意見募集

2026年10月29日〜11月29日

2026年11月4日〜12月4日


対象になるのは次の2つで、一般廃棄物と産業廃棄物の両方が含まれます。

  • リチウム蓄電池が廃棄物になったもの(電池そのもの)

  • リチウム蓄電池を部品として使う製品が廃棄物になったもの(以下、LiB使用製品)



石綿・水銀に続く「個別ルール」へ

廃棄物処理法では、性質上とくに注意が必要な廃棄物に、個別の処理基準を設けています。石綿を含む廃棄物や、水銀を使った製品の産業廃棄物がその例です。


今回の改正で、LiBを含む廃棄物もこれらと同じ枠組みに加わります。(リチウムイオン電池の廃棄ルール)



なぜ今なのか

  • 2025年度、市町村の廃棄物処理でLiB等が原因と疑われる火災事故等(発煙・発火を含む)は39,282件。うち、職員や消防隊が消火した件数は9,456件にのぼります

  • 火災事故等による被害総額は、2021年度で約96億〜108億円と推計されています(国立環境研究所の調査)

  • それにもかかわらず、現行の処理基準には、LiBによる火災を防ぐためのルールがありませんでした


■動画で見る:LiBが原因の火災が起きた処理施設

環境省は、2025年5月にLiBが原因で火災が発生した産業廃棄物処理施設を取材した啓発動画を公開しています。自社が出した廃棄物の行き先で何が起きているのか、ぜひ一度ご覧ください。

環境省「なくそう!リチウムイオン電池による火災~わたしたちにできること~ Short ver.」

https://www.youtube.com/watch?v=puCyk6627_c

(本編:https://www.youtube.com/watch?v=EwycZ-MHRLM)



2. 対象は「電池」だけではない ― LiBが入っている製品


新しいルールの対象は、電池単体だけではありません。ハンディファンやワイヤレスイヤホンのように、電池を取り外せない一体型の製品も「LiB使用製品」として対象になります。


職場で見落としやすい製品を、シーン別に整理しました。


職場のシーン別LiB製品マップ
職場のシーン別LiB製品マップ

環境省の資料によると、一般廃棄物処理実態調査(2023年度実績)で火災事故等の発生品目として挙がったもの(複数回答)は、モバイルバッテリー、加熱式たばこ、コードレス掃除機が上位でした。電動工具や作業服用のファンも含まれており、仕事で使う製品も例外ではありません。


■見分け方のコツ

  • 充電して使う製品は、見た目がプラスチック製品でもLiBが入っていることがあります

  • 本体や電池パックに「リチウムイオン」「リチウムポリマー」「Li-ion」「Li-Po」の表示がないか確認しましょう

  • 表示が見当たらない場合は、取扱説明書を確認するか、メーカー・販売店に問い合わせましょう

(出典:NITE)


事業活動に伴って出たLiB使用製品は、金属くずや廃プラスチック類などの産業廃棄物にあたります。LiBを処理できる許可業者に委託する必要があります。


■動画で見る:捨て方を誤るとどうなるか

NITEは、自治体・消防と協力して、LiB使用製品の誤った捨て方に注意を呼びかける動画を公開しています。

https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/kaden/23062901.html



3. 書類が変わる ― 委託契約書・マニフェスト


省令案では、排出事業者が扱う書類に次の記載が加わります。


【表1】排出事業者に関わる主な変更点

項目

変更の内容

省令案の関係条文

委託契約書

LiB等の処理を委託する場合、その旨を記載

規則第8条の4の2

紙マニフェスト

LiB等の数量を記載。引渡し時に、LiB等が含まれる旨と数量を確認して交付

規則第8条の20、第8条の21

電子マニフェスト

登録事項に、LiB等が含まれる旨を追加

規則第8条の31の5ほか

帳簿

帳簿を備える必要がある一部の排出事業者は、LiB等の処理に関する事項を記載

規則第8条の5

事業場内の保管

掲示、仕切りなどの火災・延焼防止措置、乱暴な取扱いの禁止、火気・過熱の回避(4章で解説)

規則第8条



実務上のポイント

  • 「何がLiB等にあたるか」を社内で判断できることが前提です。  2章の棚卸しができていないと、契約書もマニフェストも正しく書けません


  • 数量の把握方法を決めておきましょう。 マニフェストには数量の記載が求められますが、単位(重量か個数か)などの詳細は、今後の通知などで示されると考えられます

  • 契約の見直しは、来年度の更新に合わせるのが現実的です。 年度替わりに契約を更新している場合は、2027年4月の施行とタイミングが重なります

  • 電子マニフェストを使っている場合は、情報処理センター(JWNET)からの案内も確認しましょう


■許可証の記載も、順次変わっていきます

省令案では、処理業の許可申請書や許可証の「廃棄物の種類」欄に、LiB等を含む場合はその旨を書くことになります。新しい廃棄物の種類ができるわけではなく、廃プラスチック類や金属くずなどの種類に「LiBを含む」と注記される形です。

ただし、すでに交付されている許可証は差し替え不要とする経過措置が予定されています。記載は新規許可や更新のタイミングで順次加わっていくと考えられるため、当面は記載のない許可証も残ります。



4. 保管が変わる ― 事業場内でもLiBの区分と火災対策を


省令案では、排出事業者が事業場内で産業廃棄物を保管するときの基準(産業廃棄物保管基準)にも、LiB等について次の内容が加わります。


  • 保管場所の掲示板に、LiB等を保管している旨を記載する

  • 他の物と混ざらないよう仕切りを設けるなど、火災の発生・延焼を防ぐ措置を講じる

  • 転倒・落下・衝撃・引きずりなど、乱暴な取扱いをしない

  • 炎や火花、高温のものに近づけず、過熱を避ける


環境省の規制の事前評価書でも、処理業者が新基準に対応する方法として、仕切りの設置や耐火性容器の導入が挙げられています。



保管量・状態に応じた使い分け

状況

対応の目安

保管量が少ない(オフィスで時々出る程度)

専用の回収箱を決めて他の廃棄物と分ける。端子をテープで絶縁し、火気や直射日光を避ける

保管量が多い・頻繁に出る(現場・店舗・倉庫)

専用の保管スペースを区画し、延焼を防ぐ容器の導入を検討する

膨張・変形・破損した電池がある

発火リスクが高いため他と分け、延焼を防ぐ容器で一時保管し、早めに処理業者へ引き渡す

出典:環境省・NITEの資料をもとにCYCLETANK作成

■膨張した電池はとくに注意

膨張・変形した電池は、家電量販店などに設置されている回収ボックス(一般社団法人JBRC)では受け付けていません。発火のリスクも高いため、他の廃棄物と分けて保管し、処理業者への委託を前提に計画しておきましょう。

■保管は「消防法」の視点も欠かせません

LiBの電解液は、消防法上の危険物(第4類第2石油類など)に該当する場合があります。大量に保管すると、消防法や市町村の火災予防条例による規制の対象になることがあります。

廃棄物処理法の新しい基準を満たしても、消防法の確認が不要になるわけではありません。保管量が多い事業所は、所轄の消防署にも確認しておきましょう。

(出典:消防庁資料ほか)

■CYCLETANKからのご案内|リチウムイオン電池の保管・火災対策ソリューション

新しい保管基準への対応は、廃棄物処理法だけでは完結しません。CYCLETANKでは、廃棄物処理法と消防法の両面から、保管の備えをご提案します。

  • 保管量に応じた消防法上の扱いの確認と、所轄消防署への事前相談のサポート

  • 保管場所の区画・レイアウトの見直し

  • 延焼防止に配慮した保管容器などの資機材のご提供(準備中)

  • 社内の取扱いルールづくりと従業員教育


ご相談はこちら → https://www.cycle-tank.com/contact

※消防法上の扱いは、保管量や保管方法、市町村の火災予防条例によって異なります。最終的な判断は所轄の消防署が行います。



5. 施行までにやること


スケジュール

施行までのタイムライン
施行までのタイムライン

排出事業者のチェックリスト

□    社内のLiB製品を棚卸しする(図1を参考に、どの部署から何が出るかを把握)

□    分別ルールを決め、社内に周知する

□    委託先がLiB等を受け入れられるか、保管・処理の体制を確認する

□    委託契約書のひな形を見直し、来年度の契約更新に反映する

□    マニフェストに書く数量の把握方法を決める

□    保管場所に掲示・区分・火気対策を整える




社内周知に使える公式素材



まとめ(リチウムイオン電池の廃棄ルール)


LiBを含む廃棄物は、2027年4月から(予定)、石綿や水銀と同じように個別のルールで管理される廃棄物になります。排出事業者にとっての変化は、大きく次の3つです。


  • 書類:委託契約書とマニフェストに、LiBを含む旨や数量を記載する

  • 保管:事業場内でも、掲示・仕切り・火気の回避などの対策が必要になる

  • 委託先:LiBを適正に扱える処理業者を選び、対応状況を確認する


この3つは、それぞれ独立した作業ではありません。社内のどこから、どんなLiB製品が出ているかを把握していなければ、契約書もマニフェストも正しく書けません。保管が不十分なら、自社の事業所が火災の起点になりかねません。


マニフェストに書く数量の単位など、細かな運用は今後の通知などで示されると考えられます。ただ、製品の棚卸しや分別ルールの整備、委託先への確認は、通知を待たずに始められます。施行予定日まで約5か月。来年度の契約更新に間に合うよう、できるところから準備を進めましょう。


■CYCLETANKからのご案内|リチウムイオン電池の取扱い点検

「今の分別・保管・委託のやり方で、新しい基準に対応できるのか」――。

CYCLETANKでは、貴社のリチウムイオン電池の取扱いが新しい基準に照らして妥当かを確認し、改善点をご提案します。

  • 社内の分別ルールと、保管場所・保管方法の確認

  • 委託契約書・マニフェストへのLiBの反映状況の確認

  • 委託先の受け入れ体制の確認(現地確認への同行・代行も承ります)


お問い合わせはこちら → https://www.cycle-tank.com/contact


後編のご案内

処理業者・自治体に求められる積替え・保管の基準や設備の備えは、後編で解説します。

【後編】リチウムイオン電池の保管、ペール缶で足りるのか? ― 延焼防止の新基準と現場の備え



出典

  1. 環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令案について」(令和8年10月)p.1

    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000323060

  2. 環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令案 新旧対照条文」p.1–3(一般廃棄物)、p.4–6(産業廃棄物)

    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000323061

  3. 環境省「『廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令案』に対する御意見の募集について」(令和8年10月)p.1

    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000323059

  4. 環境省「規制の事前評価書(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令案)」(令和8年10月)「1 規制の必要性・有効性」「3 効果(課題の解消・予防)の把握」「4 負担の把握」

    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000323062

  5. 環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令案について」(令和8年11月)p.1(改正の趣旨、①②)、p.2(④⑤⑥⑦)、p.3(⑩)、p.4(⑬、スケジュール)

    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000323499

  6. e-Govパブリック・コメント「『廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令案』に対する御意見の募集」(案件番号195260077、公示日2026年11月4日、受付締切2026年12月4日0時)

  7. 環境省 報道発表「市町村におけるリチウムイオン電池等の処理状況調査結果(令和7年度実績)及び関連事例集の公表について」(2026年9月29日)、同「調査結果概要」p.3

    https://www.env.go.jp/press/press_05588.html

  8. 環境省「リチウムイオン電池に係る火災防止と再資源化に向けた取組」(2025年10月30日、参考資料7)p.2

    https://www.env.go.jp/content/000350321.pdf

  9. 環境省 報道発表「『リチウムイオン電池による火災防止強化キャンペーン』及び『リチウムイオン電池による火災防止月間』について」(2026年9月11日)

    https://www.env.go.jp/press/press_05567.html

  10. 環境省 リチウムイオン電池特設サイト「『ちびまる子ちゃん』とのコラボ啓発」(2026年11月2日公開)、「啓発ツール」

    https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/maruko_2026.html

  11. https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/pr_tools.html

  12. 環境省 事務連絡「リチウム蓄電池等に起因する廃棄物処理施設における火災等の防止について」(令和5年4月11日)p.1

    https://www.env.go.jp/content/000127114.pdf

  13. NITE「『ごみ捨て火災』、被害は100億円超え!~充電式電池は正しく捨てましょう~」(2023年6月29日)p.2(LIB使用製品の例)、p.7(見分け方)、p.8(JBRCの回収条件)

    https://www.nite.go.jp/data/000149340.pdf

  14. NITE「LiB製品の事故(近畿2府4県)」表2の注記(モバイルルーター、ドライブレコーダー、無線機など)

    https://www.nite.go.jp/data/000096611.pdf

  15. NITE ニュースリリース別添「年別・製品別の事故発生件数」表1(充電式電動工具、ポータブル電源、照明器具など)

    https://www.nite.go.jp/data/000161883.pdf

  16. 消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう」

    https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_083/

  17. 中央環境審議会 資料(ファン付き・カイロ付き作業服などLIB内蔵品目に関する意見)

    https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000335329.pdf

  18. 環境省 事務連絡「リチウムイオン電池の適正処理について」(令和元年8月1日)「1.市町村における処理体制の適正化」(JBRCによる端子の絶縁などの安全対策)

    https://www.env.go.jp/content/900537027.pdf


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