再生材は「確保する時代」へ ~ 企業と自治体の次の一手 ~
前編では、2026年9月に公表された第五次循環型社会形成推進基本計画の第1回点検の数字を分解し、日本の循環指標の「改善」が資源を使う量の縮小に支えられ、資源を回す量はほとんど増えていないことを確認しました(前編)。
後編では、今回の2つの重点点検分野、「資源循環のための事業者間連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環」と「多種多様な地域の循環システムの構築と地方創生の実現」の結果から、企業と自治体の次の一手を考えます。第2章は企業向け、第3章は自治体向け、第4章は両者に共通するリチウムイオン電池(LiB)の論点です。

1. 重点2分野の点検結果
2つの重点分野で、目標が設定されている主な指標は次のとおりです。
表1:重点点検分野の主な指標
分野 | 指標 | 最新値 | 目標 | 判定 |
事業者間連携 | バイオマスプラスチックの導入量 | 15万t (2022年度) | 約200万t (2030年度) | 更なる取組が必要 |
認定長期優良住宅のストック数 | 約174万戸 (2024年度) | 約250万戸 (2030年度) | 注意が必要 | |
地域循環 | 1人1日当たりごみ焼却量 | 約662g (2023年度) | 約580g (2030年度) | 注意が必要 |
廃棄物エネルギーを外部に供給している施設の割合 | 43.1% (2023年度) | 46% (2027年度) | 達成見込み | |
長期広域化・集約化計画を策定した都道府県の割合 | 今後データ取得 | 100% (2027年度) | ― |
出典:点検報告書 表III-2(p.32)、表III-6(p.53)をもとに作成。バイオマスプラスチックは、プラスチック資源循環戦略の点検資料(2026年8月)では、定義と年度の異なる統計で2024年度の製品流通量を21万tとしています。
事業者間連携の分野では、目標のある2指標がいずれも未達の見込みで、とくにバイオマスプラスチックは目標との差が大きく「更なる取組が必要」とされました。地域循環の分野では、廃棄物エネルギーの外部供給が順調な一方、ごみの焼却量の削減が伸び悩んでいます。
数字以上に注目したいのは、報告書が率直に認めている点です。事業者間連携については、ネットワークやプラットフォームといった「連携の仕組み」づくりが進んでいることは事例で確認できるものの、その規模や状況が動静脈連携の推進に十分かどうかは現状把握が困難だとしています。部会でも、事業者間連携はそれ自体が目的ではなく、再生材の需要拡大やコスト低減、質の確保、安定供給を実現する手段として、成果に着目して整理すべきだとの意見が出ました。
連携の「数」は増えました。しかし、それで再生材がどれだけ確保できたのかは、まだ見えていません。
2. 企業編:再生材の需要は制度で増え、供給は伸び悩む
需要は制度が押し上げる
再生材の需要は、これから制度によって押し上げられます。2026年4月に施行された改正資源有効利用促進法では、第一弾として自動車、家電4品目、容器包装の製造事業者等に、再生プラスチックの利用計画の提出と定期報告が求められます。計画の提出は2027年度から、定期報告は2028年度から始まります。
金属についても、2026年4月の循環経済行動計画に基づき、メタルリサイクル推進戦略に掲げた2030年の再生材供給目標の実現を目指すとされました。7月の日本成長戦略では、国内で生産される電解銅の約3割を再生資源由来とすることを目指す方向が示されています。
供給は伸び悩んでいる
一方、供給側の数字は伸び悩んでいます。前編で見たとおり、国全体の循環利用量は2000年度からほぼ横ばいです。プラスチックでは、業界団体の統計による再生樹脂投入量が2021年の33万tから2023年の48万tまで増えたものの、2024年は43万tと約1割減りました。報告書の本文は2021年以降を「微増傾向」と記しており、直近の減少には触れていません。

金属は、出口側の循環利用率がすでに約97%と高い水準にあります。これ以上の上積みは、回収量を増やすことと、国外への流出を抑えることにかかっています。報告書も今後の方向性として、国内での循環資源の回収拡大や不適正な国外流出の抑制を挙げています。レアメタルを含むe-scrapのリサイクル処理量は2024年度に383千tで、2030年の目標50万tに向けて増加しています。
■ 部会で語られた「本音」
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制度が需要をつくる一方で、価格差が普及を妨げ、供給は伸び悩んでいます。この状態が続けば、質と量のそろった再生材は取り合いになる可能性があります。再生材は、「出せば引き取ってもらえるもの」から「確保しなければならないもの」に変わりつつあります。
企業がいま動いておきたいこと
自社製品が再生プラスチックの利用計画・報告の対象かを確認し、再生材の利用量・利用率を記録できる体制を整える
必要な再生材の量・品質・時期を見積もり、調達先を早めに押さえる。サーキュラーパートナーズや循環経済パートナーシップ(J4CE)など、既存の連携の場も選択肢になる
自社の排出物を「再生材の原料」として出せるよう分別と品質を上げ、委託先を「適正に処理できるか」だけでなく「再生材として戻せるか」で選ぶ
再生材の利用による温室効果ガスの削減効果を、自ら算定して示せるようにする
プラスチックの再生利用の現状は、既報「プラスチック資源循環戦略の6つのマイルストーン」で詳しく解説しています。
■ CYCLETANKのサーキュラーエコノミー支援(企業向け) CYCLETANK合同会社では、廃棄物・再生材のフローの整理、再生材利用率の算定体制づくり、改正資源有効利用促進法への対応状況の確認、再生材の調達や排出物の資源化に向けた事業者間連携の検討をご支援しています。「自社が対象になるのか分からない」「利用率を出したいがデータが揃っていない」という段階からご相談いただけます。 お問い合わせは こちら |
3. 自治体編:「燃やす割合」の上昇と、2027年度末の広域化計画
焼却量の減少は「ごみが減ったから」
1人1日当たりのごみ焼却量は、2000年度の871gから2023年度の662gへ減りました。ただし報告書の要因分析によると、この減少はごみの総量が減った効果(246g減)によるもので、処理の仕方の変化はむしろ焼却量を37g押し上げる方向に働いています。
処理の内訳を見ると、直接焼却の割合は2000年度の73%から2013年度の75%、2023年度の77%へと上がっています。2000年代は直接埋立から焼却への転換が進み、直近約10年は直接資源化や集団回収の減少が影響したとみられます。

地域別に見ると、一般廃棄物の循環利用率は、2013年度と比べて全国8つの地域ブロックすべてで低下しており、東北と近畿は14%前後と相対的に低い水準です。都市規模別では小都市・中都市で低下し、小都市では1人1日当たりの焼却量がほぼ横ばいです。2030年度の目標580gに対しては、2015年度からの傾向でも2020年度以降の傾向でも届かないと判定されています。
集団回収は、町内会や子ども会などの担い手と、新聞・雑誌などの紙ごみに支えられてきた仕組みです。担い手の高齢化や紙媒体の減少が指摘されるなかで、ごみの減量だけに頼っていては、焼却量の目標には届きにくい状況です。資源化の経路そのものを組み直す必要があります。
「地域循環共生圏」の中身
地域循環共生圏の形成に向けて資源循環を核とした取組を行う地方公共団体は、2017年度の91から2023年度の233へ増えましたが、近年は増え方が鈍っています。全国の市区町村の1割強にあたる数です(筆者試算)。取組の内訳では約半数が一般廃棄物の共同処理などの「広域化」で、次いで未利用資源や焼却廃熱を活かす「地域資源・既存施設の活用」が多く、「動静脈連携」や「新規ビジネス」はごく一部にとどまります。部会でも、取り組んだかどうかだけでなく、その内容を見ていく必要があるとの意見が出ています。
期限は2027年度末:長期広域化・集約化計画
期限が迫っているのが、ごみ処理の長期広域化・集約化計画です。環境省は都道府県に対し、2050年度までの目標を定めた計画を2027年度末までに策定するよう求めていますが、現時点で策定している都道府県は限定的です。国は、広域化・集約化した処理施設を「地域のエネルギーセンター」かつ災害時の「防災拠点」として再定義・整備する方向を示しています。
一方で部会では、広域化・集約化についてはその意義も踏まえつつ十分な議論が必要との意見も出ています。市町村にとっては、施設の規模だけでなく、エネルギー回収、災害対応、資源化の経路をセットで考える局面です。
先行事例に学ぶ
部会のヒアリングでは、神戸市が、つめかえパックや製品プラスチックなど従来の行政収集では再資源化が難しい品目を品目別に回収する資源回収ステーション「エコノバ」を市内各所に設け、日用品メーカーや小売事業者と連携して水平リサイクルに取り組む事例が紹介されました。大阪府は商業施設等を活用した衣類の回収スキームを、HUB & STOCK株式会社は川崎市と連携して建設現場の余剰建材を地域に再流通させる拠点を展開しています。国も「資源循環自治体フォーラム」を全国7か所で開催し、自治体・企業・スタートアップのマッチングを進めています。
自治体がいま動いておきたいこと
自団体のごみ処理データを「総量」と「処理の仕方」に分けて点検し、直接焼却の割合や集団回収量の推移を確認する
集団回収・拠点回収・店頭回収など、民間の回収ルートとの連携を組み直す
広域化・集約化の検討に、エネルギー回収と外部供給、災害対応、将来のごみ質の変化を織り込む
公共調達や公共工事で再生材を使う基準を設け、地域の再生材需要をつくる
資源循環自治体フォーラムの様子は、既報の参加レポートで紹介しています(フォーラムから見えたサーキュラーエコノミーを動かす5つのヒント)。
4. 共通の急所:リチウムイオン電池
企業と自治体の双方にかかわるのが、リチウムイオン電池(LiB)です。部会では、LiBの火災事故防止と資源循環の構築は非常に重要な課題であり、国の取組の具体例として取り上げられるとよい、との意見が出ました。
LiBは、ごみ収集車や処理施設で起きる火災の原因になる一方、コバルトやニッケル、リチウムなどを含む二次資源でもあります。安全と資源確保の両面から、回収の仕組みが問われています。
制度面では、2026年4月の改正資源有効利用促進法の施行にあわせて、モバイルバッテリー、携帯電話、加熱式たばこについて判断基準が定められ、一定量以上の製造事業者等に、判断基準に基づく自主回収・再資源化の対応が求められるようになりました。
ただし、回収の実績はまだ伸びていません。一般社団法人JBRCが回収したリチウムイオン電池は2024年に510tで、2020年以降は減少傾向にあると報告されています(経済産業省 指定再資源化製品WG資料、2025年8月)。国民アンケートでも、携帯電話などの小型電子機器を店頭回収に出している人は20.6%にとどまります。
回収の入口が増えても、使われなければ電池はごみに混ざり、火災の原因になり続けます。製造・販売事業者、自治体、処理事業者が回収の入口と出口をつなぐことが、安全対策と重要鉱物の確保を同時に進める近道です。小型家電リサイクル制度の見直しとLiBの発火リスクについては、既報記事で詳しく解説しています(モバイルバッテリー等4品目が小型家電リサイクル法の対象へ)。
5. 企業・自治体別アクションチェックリスト
表2 いま確認・着手しておきたいこと
対象 | テーマ | 確認・着手したいこと |
企業 | 再生材の利用義務 | 自社製品が再生プラスチックの利用計画・報告の対象かを確認し、利用量・利用率を記録する体制を整える(計画の提出は2027年度から) |
再生材の調達 | 必要な量・品質・時期を見積もり、調達先と連携の場を確保する | |
排出物の資源化 | 分別と品質を上げ、「再生材として戻せる」委託先を選ぶ | |
環境価値の可視化 | 再生材の利用や資源循環による温室効果ガスの削減効果を自ら算定する | |
自治体 | 焼却依存の点検 | ごみ処理データを総量と処理の仕方に分け、直接焼却の割合や集団回収量の推移を確認する |
広域化・集約化 | 都道府県の計画(2027年度末期限)に向け、エネルギー回収・災害対応・資源化の経路を一体で検討する | |
地域の再生材需要 | 公共調達や公共工事で再生材を使う基準を整える | |
共通 | リチウムイオン電池 | 店頭・拠点・行政回収のルートを周知・連携し、収集運搬と処理施設の火災対策を強化する |
まとめ
第1回点検の重点分野から見えてきたのは、連携の仕組みはできつつあるものの、その成果である再生材の確保はまだ数字に表れていないという現実です。制度が再生材の需要を押し上げ、供給が伸び悩む状況が続けば、再生材は「確保しなければならないもの」になります。
企業にとっては再生材の調達と報告、自治体にとっては資源化の経路と処理施設の将来像。いずれも2027年度という近い節目を持つ課題です。国の点検の数字が次に更新される2年後を待たず、自組織の「回す量」を把握するところから始めることをおすすめします。
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参考資料



